第2話 完璧美少女
入学式の翌日、もう早速授業が始まるらしく、生徒達は割り振られた各々のクラスに登校していた。
やばい……ボクの学園生活もう詰んだかも……
登校して早速心の中でそう嘆く。
「どうしたんだい、凪。浮かない顔をしているね」
ボクの前に座るこの状況の元凶、夜桜星那……この貞操逆転ゲーム世界の主人公さんは上機嫌そうに微笑みかける。
まさか最初に話しかけられたのが夜桜瀬那だったなんて……予想外すぎるよぉ……
ボクがこの男が主人公だと、わからなかったのはゲームだと主人公、夜桜星那は名前しか登場しておらず、その容姿は一切不明だったからだ。
でも……納得した……そりゃあ貞操逆転世界にこんなイケメンがいたらそりゃあ、ヒロイン達からモテるよね……
「いや、星那のせいだってば!」
「そうなのかい?」
星那は見当も付かないとでもいいたげに首を傾げる。
このぉ……鈍感めぇ……!
今こうして話している間もクラスの女子達からの嫉みの籠った視線がグサグサと突き刺さ去ってくる。
入学式の翌日だというのに、既にボクが星那の彼女だという噂が広まっているらしい。誰が星那の彼女だ! ボクは男の娘だぞ!
「すまない、こうして気軽に話せる友達なんて久しぶりでね」
「え? ボクたち友達なの?」
「え……違うのかい……?」
その瞬間、星那の表情が一瞬で絶望に染まる。
「……ごめん……初めて友達が出来たと思い込んで一人舞い上がっていたようだ——」
「あー! 待ってストップストップ! ボクと星那は友達! 友達だから!」
「……本当?」
「ほ、本当だよ!」
すると星那の表情がパァッと一気に明るくなる。
いや、犬かっ!!
「……ありがとう、凪。やはり持つべきは親友だ」
「親友!?」
なんでいきなり親友にランクアップしてんの??
「え……」
「あーもう! そうだよ! ボクと星那は親友だよ!」
あぁ……本当に面倒くさい……
「そうだよね。僕と凪は親友だ……親友……ふふっ、いい響きだね」
「そうだねー親友サイコー」
ボクはもう適当に相手した。
それにしてもこの主人公なんで、男の娘の俺にこんな距離近いんだろ……
◇
あぁ……もう疲れたよ……
初回の授業を終えた、ボクは教室を出ながらトボトボと学園内を歩く。
もう勘弁してよ……星那のせいでずっと睨まれるし、ボクの平穏になるはずだった学園生活が……
そういえばクラスのメンバーも衝撃的だったな……主人公の星那にそれからこの世界のヒロイン三人も全員集結しちゃってたし。
こうなるだろうとは思っていたが、流石主人公補正。どう足掻いてもあの三人が星那と同じクラスになることはもう決められていたようだ。
「さてと……運良く星那は放課後は用があるらしいし、せっかくだからちょっと学園内を散策してみようかな!」
この学園の敷地はとんでもなく広い。広さだけなら、テーマパークが何個も入りそうなくらい。もうこれ、一つの都市で良くない?
その為、迷子にならないように生徒達は学園専用のマップをみながら移動するのが基本だ。
へぇ……カフェもあるんだ……割と近いし、行ってみよ!
ボクはマップを見ながら目的地のカフェへと移動する。
「えーっとここをいったら近いのかな」
そこはあまり他の生徒はおらず、建物の影になっていることもありかなりくらい場所だった。
えぇ……ここ通るの……嫌なんだけど……だけどここを通らなければかなり俺遠回りすることに
なるし……行くしかない……
ボクは少し恐怖心を持ちながらも一歩一歩進んでいく。
お化けとか出ないよね?
……いや、むしろ人間の方が怖いかも……
と、その時。
「——の件は——です」
どこからか誰かが話す声が聞こえる。
え……何……?
まさか……本当に……お化けと人間どっち??
恐る恐る声がする方へ近づいていくと、段々とその人影が見えてきた。
どうやら、お化けではなく人間っぽい。でもなんでこんなところで……え……っ!?
そしてその人物の顔がはっきり見えたところでボクは思わず近くの木の陰に隠れた。
あ、あれって……水無月璃奈……!?
水無月璃奈はボクと同じクラスの少女であり、そしてこの貞操逆転ゲームの三人のヒロインの一人だ。
その美しい美貌に大人顔負けの明晰な頭脳を併せ持つ完璧美少女。入学式の時も主席で合格していて新入生代表で挨拶をしていた。
まさかこんなところで出くわすなんて……それにしてもやっぱり綺麗だ……
よく観察してみるとどうやら璃奈は電話で誰かと話しているみたいだ。
まぁ、大体相手は予想つくけどね。
「はい、わかっています。必ず、夜桜星那を手に入れてみせます」
そう伝え、璃奈は電話を切った。
電話は終わったみたい……とりあえず、ここから遠ざかろうかな……
そしてボクがゆっくりと来た道を戻ろうと、足を踏み出した時だった。
「……誰?」
璃奈の問いかけに思わずボクは立ち止まる。
まさか……バレた……?
「……流石に気のせいですかね。こんなところ誰も来ませんし」
そう言い残し、彼女はその場から去っていた。
ボクは彼女の姿が見えなくなったところでその場にへたり込む。
「あ、危なかった……見つかったかと思った……」
璃奈のあの圧は怖すぎる……本当に命の危険を感じたよ……
でも結果オーライ! 見つからなくて良かった!
「よーし! じゃあ、改めてカフェに——」
「——やはり、いましたね。会話を盗み聞きするネズミが」
背後から声が聞こえた。
「え……?」
反射的に振り返るとそこには先程去ったはずの璃奈姿があった。
璃奈は不気味な笑顔でにっこりと微笑む。
「少し……ご同行願えますよね? 真城凪さん」
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