第7話 ギャルゲー主人公の裏の顔

 汐見くんにアドバイスをもらった翌日。


 朝5時半に新の家にお邪魔し、朝ごはんを用意する。

 朝ごはんは、もちろん新の好きな揚げ物。

 唐揚げ単品では飽きると思うので、他にも味を変えたりといろいろ手を加え、アレンジする。


 もちろんご飯だけじゃない。

 昨日、脱ぎ散らかした洗濯物を回収……色々した後、洗濯をする。

 使った食器を洗い、ゴミを片づけ、あらゆるところを綺麗にしていく。

 まぁ、片づけなどは毎日しているので、そこまで汚れていることはないけど、習慣みたいなものだ。


 それが終わったら、ようやく新の寝ている部屋を訪れる。

 ノートパソコンのロックを解除した後、履歴を確認し、電源を落とし、元の場所にしまう。

 そしてしばらくの間、新の寝顔を見つめ、体を揺らし起こす。


 と、まぁ、これがざっくりにはなるが、以前までのルーティンだった。

 新のご両親共に病院を経営しており、ほとんど家を空けている。


 そのため、私が率先して、彼の身の回りの面倒を見ているわけなのだけど、汐見くんに言わせればやりすぎらしい。

 彼のアドバイスに本当に効果があるのか、半信半疑な自分がいるが、今の今までこのやり方では、新が喜んでいないのは確かだ。


 せっかくアドバイスをもらったのだから、試す価値はある。


 ――それに彼は助けてくれたから。


 そう思い、いつもより遅めの時間に隣の家を訪れた。


 朝ごはんも簡素なものを準備し、時間になったら新を起こす。

 中々起きないことに変わりはなかったが、朝ごはんを揚げ物でなく、白ご飯にみそ汁、焼き魚など準備したと伝えると驚いて飛び起きた。


 それからもお弁当も同じように汐見くんの提示したメニューで作って、控えめな大きさの弁当箱で渡すと訝しげにしながらも新は受け取った。

 登校、そして学校についてからも新にべったりと一緒にいるのは控えるようにし、自分を自制した。


 すると次第に新の反応が変わっていく。


 これまで鬱陶しそうにしていた反応もどこか柔らかくなったように思える。


 そんな感じで汐見くんのアドバイス通り、数日過ごし、私の中にあった彼のアドバイスへの疑念は払拭された。

 やっぱり彼の言うことは間違いない。


 ……そういえば、あのノートは…………………………。


 ◆


 僕――進藤新は、これまで決して順風満帆な人生を過ごしてきたわけじゃなかった。


 昔はバカでチビで弱虫でよくクラスでもからかわれているような存在だった。

 だけど、その度に幼馴染の美月が前に出て助けることが多かった。

 僕はいつも後ろで見てるだけ。


 ……まぁ、結果的に助かってたから文句は言わなかったけどさ。お礼も言わなかった。

 だってやっぱりああいうのってカッコ悪いじゃん?

 男なのに女に守られるって。

 だからその頃のことは、正直あんまり思い出したくない。唾棄すべき過去ってやつ。


 けど、中学になって美月が転校して、そこから一気に変わった。

 身長もぐんぐん伸びたし、声も低くなって。気が付けば女子の視線からの視線を集めるようになった。

 そして男子から感じ取れる卑屈な態度。そこに快感を覚えるのに時間は掛からなかった。


 それが忘れられなくて、僕は、それから勉強も運動も努力し、服装にも気を遣い始めた。

 やればやるほどできる自分はできる人間なんだと、意識するようになった。


 気がつけば俺の周りには男子も女子も多く集まるようになった。

 選ばれる側じゃなく、選ぶ側の人間。それが僕。全ては僕中心で回っているんだ。

 そう思って毎日を過ごしていた。


 そして高校に上がり、一年の終わりに幼馴染――美月が戻ってきた。

 久しぶりに再会した美月はかなり変わっていた。

 昔はボーイッシュで何事にも首を突っ込んでいた彼女が清楚な美少女に変身していたのだ。

 そしてそんな彼女が僕のために世話を焼く姿を見て、すぐに分かった。 僕に惚れてるって。


 そりゃ気分がいいに決まってる。

 昔は守られていた存在が、今では僕に夢中なんだ。


 僕自身同じように、美月以上に変わった。そんな自分を誰よりも近くで見せつけてやれる。

 今度は僕が選ぶ側だ。そう思うと自分の中で優越感が満たされていく。最高の気分に浸れた。


 ただ……美月は加減を知らなかった。

 昔から、無鉄砲な一面はあったけど、まさかここまでとは……。

 久しぶりに会った美月は、見た目は確かに変わったけど性格面が……。


 一回あいつが作った唐揚げをうまいって言っただけで翌日からバカみたいな量を作ってくるようになった。

 他の女子と話しただけで不機嫌にそうに睨んでくるし。

 ああいうのは正直、重いなって。


 でも最近、ちょっと落ち着いてきた気がする。

 ようやく僕にふさわしい『彼女』になろうとする自覚が出てきたのかもしれない。


 ……まぁ、そうは言っても美月はキープだ。

 確かに美人になったけど、いつあの性格が顔を出すか分からないしね。


 それに美人といえば、他にもいる。

 折原雪那。

 一年の頃から美人なギャルがいるって噂は聞いてた。二年になって初めて話すようになって、最初はめっちゃギャルで話しづらいと思ってたんだけど、話せばすんなりと仲良くなれた。

 これも僕のコミュニケーション能力が上がった賜物だろう。

 彼女は、何より僕の話を興味持って聞いてくれるし、趣味もをよく理解している。話が合うのだ。


 僕が買ったもの……ペンとか、使いやすそうだとかいう理由でよく同じものを買ってきたりする。

 これって僕とお揃いにしたいっていうことじゃないか?

 

 後なんでかはわからないけど、体育の時間によくジャージを持ってきてくれる。いらないって言っても持ってきてくれる。


 彼女を選んでもいいけど……やっぱりキープかな。ギャルってすぐ色んなやつに股開いてそうだし。やっぱりそういうのはね。初めてがいいから。

 

 そして最後は、黒江怜。

 一年の時、他のクラスで見かけて一目惚れした子だ。今の所、彼女が一番の本命に近いかな。


 その圧倒的な見た目。気品を溢れる仕草。

 それに誰にも靡かない強固な姿勢。そういうの崩した時ほど、より達成感を味わえるというものだ。


 一年の時、色んなやつが遊びに誘ってたけど、結果は失敗。誰一人として、彼女と仲良くなることはできなかった。

 二年になって同じクラスになった時も初めは話しかけられなかった。

 だけど、運良く彼女が困っているところを助けることができたことにより、心を開いてくれるようになった。


 まだ僕に惚れているかまでは確証がないけど、他の男子と会話するところを見ないところ、それも時間の問題かな。

 偶に、美月やユキナに対しても当たりが強いことがあるけど、それも許容できる範囲だ。


 ふふ。まさに選り取り緑ってやつ。

 中学の時よりも充実している。特に二年になってから、人生の最高潮だった。

 

 今のところは怜だけど、美月やユキナにだってチャンスはある。

 誰が僕に選んでもらえるか。


 もうレースは始まってるよ。

 さて。明日も楽しみだ。





 ……いや、いっそハーレムもありか?

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