【完結保障】知らない間に、反乱の首謀者に祭り挙げれていたいた件について

酒見 誠

第一話 首謀者おれ?

どうも、俺です。

名はアーサー・グランフォード。

とある大貴族の嫡男で、特に努力もせず、特に目標もなく、

日々をだらだら、ゆるく優雅に生きてました。

──いや、それで良かったんだ。

別に王になりたいわけじゃないし、政治とか興味ないし。

城でちょっとしたパレードに出て、民に手を振って、昼は酒飲んで、夜は寝る。

それで良かった。ほんとに。

なのに──

「殿下。王家を討つ準備が整いました」

……え、ちょっと待って?

広間に並ぶ家臣たちは皆、鎧を纏い、膝をつき、俺を見上げてる。

その目は真剣で、決死の覚悟がにじんでいて。

何人か、泣いてるヤツもいた。

……どうして?

俺、何か言ったっけ?

──いや、待て待て。

落ち着け。落ち着けアーサー。

何かの冗談だ。きっと、ドッキリ。そう、カメラを探そう。

「……は?」

思わず口から漏れたそれが、やけに乾いた音を立てた。



そうだ。話は少し前に戻る。

俺がこんな修羅場に巻き込まれる少し前、

すべての始まりは、たった一つの出来心だった。

──そう、恋だ。

金髪碧眼の才女、エリザベス。

真面目で気高くて、近づきがたくて……それでも、ふと見せる笑顔が、まぶしくて。

俺はただ、彼女に振り向いてほしかっただけなんだよ。

少しでも印象を良くしようと思って、民の前でパレードして、

彼女が見てるかもしれないと勝手にテンション上げて、

どうすれば気に入ってもらえるか、悩んで、準備して──

で、やったんだよ。パレード。

いつもよりちょっと真面目な顔して、民に手を振った。

剣を掲げて馬に乗って、それっぽいセリフまで言ってみた。

……そしたら、それが“決起宣言”になってた。

マジで意味がわからん。

たかが恋の演出が、なんで反乱の口火になってんの!?

こちとら、「結婚してくれ」と言う前段階で止まってるんだぞ!?

俺のやったことといえば、せいぜいパレードと、

あとエリザベスの父にちょっとだけ

「娘さん、いいですね」って挨拶したくらいで……


何がどうしてこうなったのか、さっぱり分からない。

けど、事態は進んでいる。というか、爆速で走り出してる。

家臣たちは俺の一挙一動を「覚悟の証」とか「計画の一手」とか勝手に受け取り、

「殿下はすでに未来を見据えておられる!」とか、うっとりした顔で語っている。

──違う。俺は未来どころか、明日の昼飯すら考えてなかった。


一応僅かな望みにかけて聞いてみる

「……お前たちは、恐くはないのか?」

(俺は怖い! すごく怖いぞ! 全然寝れない自信あるぞ!)

 その問いに、家臣たちは一斉にひざまずいた。

「恐れはあります。されど、それ以上に……殿下の御志に応えたいと願うばかり」

(うわぁぁぁぁぁぁあああ!!!)

もう引き返せない空気だった。

「……そうか、準備が整ったのか」

「はっ!」

「……ならば。皆の覚悟、しかと見届けよう」

「殿下ァァァァァ!!」

家臣の一人が号泣した。お前の涙の意味を、俺が教えてほしい。

……マジでこれ、俺のせいなの?

俺はただ、惚れた女の子と、仲良くなりたかっただけなのに──


どうしてこうなったのか。

ここから先は、俺自身の口で語らせてほしい。


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