再会~10年の空白~
@neco10
第1話
手始めに、これは私がネットで知り合った人のお話です。
彼は、今30歳でした。裕福な家庭に生まれていないのに英語がうまく喋れている人でした。
彼は政府に対して強い憎悪の感情を持っていました。
彼は伝統にも強い失望を持っていました。
彼は二週間後にニュージーランドへ行ってそのままそこで暮らすんだ。と言っていました。 国にいたくないからです。
だから僕が代わりに彼の話を残していきたいって、そう思ったんです。
彼は両親と仲が良くありませんでした。喧嘩ばかりしていました。
彼は父を嫌っていました。怒ると彼を殴るからです。
彼は母を嫌っていました。見ているだけだったからです。
ある日のことです。
彼は大学の専門を父から強要されました。彼はこの事で父と喧嘩し、家を追い出されました。そして彼は大学を退学しました。
彼は高校を卒業した証明書を持って家を出て仕事を探しました。
それから十年が経ちました。
彼は家に初めて帰りました。妹から両親が心配しているのを伝えられたからです。
でもまずは彼が十年間何をしていたのかを少し話したいと思います。
彼はまず仕事を探しました。でもそれが何の仕事かは言っていませんでした。もしかしたら僕が忘れてしまったのかもしれません。でもはっきりと覚えていることもあります。
彼はぼらんていあに参加していました。コロナのロックダウン中に医療品を病院で運んだり、家に取り残された動物を助けに行きました。同時期に起きた津波の被害にもボランティアを志願し、助けに行きました。
僕はなんでボランティア活動なんてしてるの?って聞きました。そしたら彼は神様が見てるんだよって教えてくれました。他人を助けることで自分も助けられる時が来るって言っていました。
そして彼はあるボランティア活動中に救助したネコを引き取りました。その猫は妊娠したことによって家族から捨てられました。病気になってるかもと思われたからです。でも、ワクチンを毎日上げていたので病気なわけがないといってもその家族は最後まで猫を引き取ることを拒否しました。
僕はその家族がただ単に猫をうっとおしく思っているんだなって感じました。でも彼にはそのことを伝えませんでした。
話を戻したいと思います。
長い、長い帰省でした。彼は100キロほどを運転して家に入りました。彼の手にはケーキと花束、そして彼が引き取った猫が一緒にいました。
扉を開いたらまず怒声が聞こえてきました。父が彼に対して大きな声で怒鳴っていたんです。そして母はただそれを見ていました。昔と全く同じでした。でも少し違うのは声が聞こえてくる位置が少し低いこと。
父は老いていました。十年前の父と比べると力強さが感じられませんでした。そんなことを思っていると父が彼の持ってきたケーキを彼に向って投擲しました。でもそれは空を通って玄関のドアにぶちまけられました。
花束も投げられました。これは彼の胸に強く当たりました。そして父は殴りかかってきました。けれどなぜか痛くありませんでした。彼は父が老いていたからって言っていました。横を向くと母はただ立っていました。彼はこの光景をスマホで撮りました。 どうして?とは聞けませんでした。彼はこの疑問に答えてはくれなかったけどこの時に一つだけ印象深かったことを教えてくれました。彼の猫がひどく驚いた顔をしていることが忘れられないと、そう言っていました。
僕はきっと彼は猫のことしか見れなかったんだろうなって思ってしまいました。
彼はまた100キロほど運転して彼と猫の家に帰りました。そして妹に父の醜態を見せようとしました。でも妹はそれを拒絶しました
この時、彼は妹も苦しいんだなって気づいたと教えてくれました。
彼には妹がいました。彼の話によるととてもやさしい人だったらしいです。そして、ある男性と巡り会って結婚していたらしいです。でも彼女はもういません。死んでしまった。その時、彼はいませんでした。妹を見とれなくて悲しい思いをしていました。死因はただの風だったらしいです。そう、ただのかぜ。彼女の家族は何回も何回も病院に連れてったり、連絡をしていました。でも病院が対応してくれませんでした。時期が悪かった、コロナでした。だから病院は熱がないなら家で安静にしてろとだけ言ったそうです。後日、彼は友達から政府の要人が病院にいた、と教えられました。病院は彼の妹を救わなかったが、政府の健康な老人たちを救っていました。
そして彼はボランティア活動を辞めました。神なんていないんだって、そしてこの世界はどこまでも不公平だって気づきました。
僕はこの話を聞いた時、とても恥ずかしい、そんな思いをしていました。僕はコロナのおかげで学校がオンライン授業になって簡単だなとしか思っていなかったからです。
もう一つだけ、彼は妹のことを教えてくれました。
まだ彼が家から出ていく前です。彼のおばあちゃんが死んでしまいました。父は親せきを呼んで葬式を開きました。
でも、お祖母ちゃんの葬式なのにその姿を見るのが禁止されていました。最後に会えないまま火葬をするらしいです。
それに妹が反対しました。最後にお祖母ちゃんに会いたいと父に言いました。そしたら父が妹の頬を平手でたたきました。
それから、妹は父に意見することが少なくなったと言っていました。
最後に彼は動物のドキュメンタリーの話をしてくれました。シマウマが群れで川を渡るシーンです。川にはワニがいました、でもシマウマはそれに気づかないで渡ってしまったんです。そしたら不運なシマウマがワニに食べられました。カメラが近づくと顔の半分が食われていることが分りました。
子どもを妊娠しているシマウマが人間のハンターに殺されて、お腹を開いたらその子供の頭が見えたという話もしてくれました。
そして最後の最後に
自分の人生を楽しんでと彼に伝えられました。
僕はどうやって答えたらいいのかわからないでいた。だから力なく「うん」としか答えられなかった。
再会~10年の空白~ @neco10
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