暗がりの窓
Zamta_Dall_yegna
暗がりの窓
ビルの中途階。明かりのない場所。窓際から入る光で照らされている。窓から下を見れば、人や建物がミニチュアのように見える。犬がいるとか、婦人が話し込んでいるだとか。
普段、誰と話していても、自分はそこにいない。相手が話すのを聞いているだけ。自分の声すら、他人のもののよう。ただ映像が流れている、そんな感覚だ。
不快な思いや痛い思いをすると、ああ生きていると感じる。だが、それは本当に生きているのだろうか。自分の経験や糧にせず、呼吸をするだけで何もしていないのと大差がない。この建物から外を見ているのと、何が違うのだろうか。
たとえ、ここから飛び降りたとしても何の意味もない。人の迷惑になったり、トラウマを植え付けるだけ。金銭や社会問題として、処理されるだけ。必要とされていない、お互い他人に興味がないことが多いこの世界では、何も望めない。
やるべきことがあるから、まだ手放せない。だが、なにもかもに疲れている。病気で息苦しくなる度に「ああどうしてここまでして生きているのか」と疑問を抱く。
窓は雨が流れて、外が見えなくなっていた。建物の軋む音に、雨の音。窓をたたき壊したくなる衝動が駆け巡る。自由にさせてほしい。楽にしてほしい。辛い時に限って、孤独感が加速する。
悲しくても、苦しくても、きっとそれは記号でしかないのだろう。自分のいた跡など、消えてなくなるのだろう。
暗がりの窓 Zamta_Dall_yegna @Zamta_Dall_yegna
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