第11話扉の前の決意

ラップトップの画面が放つ人工的な光の下、夜の静寂の中で生まれた決意は、とても勇敢に思えた。とても、正しいことのように。だが、朝は容赦なくやって来て、鋭い日差しと、残酷な現実を連れてきた。


そのアイデア――剣道部に入る――は今や、肌に張り付く濡れた服のようだった。重く、冷たく、そして、ひどく居心地が悪い。


春姫は、洗面所の鏡に映る自分を見つめた。顔を洗った温かいお湯の蒸気がまだ空気中を漂い、その姿をわずかにぼやかしている。鏡の中の少女は、昨日と同じに見えた。同じツインテール、同じ瞳。だが、そこには何かが違っていた。唇の端の、微かな震え。恐怖。


(本当に、できるの?)


心の中の声が、囁いた。昨夜の感情の波に突き動かされた自分よりも、ずっと理性的な声が。


彼女はもう一度、今度はもっと強く、冷たい水を顔に浴びせた。突き刺すような冷たさが、目を覚まさせるための平手打ちのようだった。もう、後戻りはできない。後ずさることは、遠くから観察するだけの者に戻ること、決して満たされることのない好奇心の中へ戻ることを意味する。後ずさることは、白鷺のあの『帰れ』という言葉を、最終宣告にさせてしまうことを意味する。


嫌だ。それだけは、嫌だった。


「春姫! チャーハン、冷めちゃうわよ!」


階下からの佳苗の声が、彼女を内なる戦いから引きずり出した。


「はーい、お母さん!」


食卓の雰囲気は、普通だった。普通すぎた。父は、今朝はもっと早くに出勤したようだ。母と二人きり。スプーンと皿が触れ合う音、天気予報を流すテレビの音。全てがあまりにも日常的で、頭の中の混乱と比べると、非現実的にさえ感じられた。彼女は急いで食事をし、その一口一口が、小石を飲み込むような味だった。


***


「あんた、何がしたいの?」


賑やかな歩道を歩いていると、桃の質問が春姫の物思いを破った。今朝の空は雲一つなく晴れ渡っているが、春姫は自分の頭の上にだけ、分厚い暗雲が垂れ込めているように感じていた。


「え?」


「何がしたいのって聞いてるの」と、桃は繰り返した。今度の口調は、より鋭い。「剣道部に入るって? 剣道? あんた、いつから竹の棒で殴り合うのに興味持ったわけ?」


この反応は、予想していた。朝の間ずっと、心の準備はしていた。だが、桃からの直球の爆弾は、それでも彼女を少しだけぐらつかせた。「ただ……何か新しいことを、試してみたいなって。」


それは、世界で最も弱い言い訳だった。そして、二人ともそれを分かっていた。


桃は、歩くのをやめた。春姫と完全に向き合うように振り返り、何人かの歩行者が彼女を避けなければならなかった。その目は、探るように細められている。「新しい何か」と、彼女は吐き捨てた。「それとも……新しい『誰か』さん?」


春姫は黙っていた。その沈黙が、最も正直な答えだった。


「信じられない」と、桃は言った。その声は、怒りと不信が混じり合っていた。彼女は再び歩き出し、今度は苛立ちに満ちた速足で。春姫は、追いつくために半ば走らなければならなかった。「春姫、あんた、頭おかしくなったんじゃないの? 冬美先輩が言ったこと、忘れたの? 昨日、道場の前であんたに向けられた態度、忘れたの? 追い出されたんだよ!」


「だからこそだよ!」と、春姫は言い返した。交通の騒音に負けないよう、少し声を張り上げて。


「だからこそ、何なの? 部活に入ったら、あいつがいきなり優しい王子様にでも変身するとでも思ってんの? あいつの態度は、嵐みたいなのよ、春姫! あんたは、わざわざその中心に向かって歩いて行こうとしてるの! 何のために!?」


何のために? 春姫自身にも、確かな答えはなかった。彼の脆さを理解したいから? 彼の孤独に、腹が立つから? 誰かの希望がゆっくりと死んでいくのを、見ていられないから? そのどれもが、自分自身にさえ、あまりにも詩的で、大げさに聞こえた。


「ただ、知りたいだけ」と、彼女は静かに答えた。それが、最もシンプルな真実だった。


桃は、大きく鼻を鳴らした。二人はもう、校門に近づいていた。「何を知りたいって言うのよ。毎日、侮辱される気分? ゴミでも見るような冷たい目で見られる気分? 春姫、聞いて。これは、悪い考えよ。すごく、すごく、悪い考え。」


「大丈夫だよ、桃ち。」


「昨日もそう言って、結局、生ける屍みたいな顔して帰ってきたじゃない!」と、桃は食い下がった。彼女は校門の近くで立ち止まり、感情のせいで少し息を切らしていた。「もう知らない。私は警告したからね。何かあっても、私のせいにしないでよ。」


彼女は、春姫の返事を待たなかった。苛立たしげに一度体を揺らすと、先に歩き出し、チャコールグレーの制服の群れの中に消えていった。揺れる決意の合間に、罪悪感が突き刺さるのを感じながら、春姫は一人、そこに立ち尽くしていた。


***


その日の授業は、一世紀のように感じられた。一秒一秒が、無理やり引き伸ばされているかのようだ。目の前の白鷺の背中は、もはや単なる風景ではなかった。今や、それは目的地であり、突破しなければならない城壁だった。


数学の授業中、先生がベクトルについて説明している間、春姫は、今日の放課後、自分の席からあの古い体育館まで、自分が進むべき直線のことしか考えられなかった。


帰りのチャムが、戦いのゴングのように鳴り響いた。春姫の心臓が、喉元まで跳ね上がる。その時が、来た。


彼女が教科書を片付けていると、桃が机のそばへやってきた。その表情はまだ不機嫌だったが、眼差しは少し和らいでいた。「あんた……本当に、やるの?」


春姫は頷いた。ペンケースを鞄に入れる手が、少しだけ震えている。


桃は、長い息を吐き出した。敗北の音だった。「分かったわよ。でも、一つだけ約束して。」彼女は、春姫が自分を見るまで待った。「もし、あいつがあんたを傷つけたら――言葉でも、何でも――すぐにそこを離れること。意地になってそこに居座らないこと。分かった?」


春姫は薄く笑った。心からの、感謝の笑みだった。「うん。」


「よし。」桃は頷いた。「私、先に帰るから。後でメッセージして。まだ生きてるって、知らせて。」


「必ず。」


桃が去った後、春姫は数分間、静かに自分の席に座っていた。教室は空っぽになった。静かだ。そこにいるのは、自分と、自分自身の決意の反響だけ。深呼吸をして、彼女は立ち上がった。


古い体育館への道は、昨日とは違って感じられた。昨日は、侵入者だった。今日は、挑戦者だ。足はもはや、忍び足ではない。心臓は戦太鼓のように打っていたが、確かな足取りで歩いた。


道場の引き戸の前に着いた。固く閉ざされている。昨日は、まるで誘うかのように少しだけ開いていたこの扉が、今日は、拒絶の意思表示のようだった。


手が、上がり、空中で一瞬ためらった。そして、ノックした。


トントン。


その音は、静かな廊下では、小さく、弱々しく響いた。返事はない。


息を吸い込み、ありったけの勇気をかき集め、もう一度、もっと強くノックした。


ドン、ドン、ドン!


静寂。そして、中から足音が聞こえた。重く、気だるげな足音。


スッ……扉が、頭一つ分ほどの隙間を開けて、横に引かれた。その隙間に、白鷺の顔が現れた。その灰色の瞳が細められ、表情はほんの一瞬で、困惑から純粋な苛立ちへと変わった。


「またお前か」と、彼は吐き捨てた。質問ではない。「言ったはずだ――」


「剣道部に、入部したいです。」


その一文が、彼の言葉を遮って、春姫の口から滑り出た。勇気が完全に蒸発してしまう前に、一息で、速く言った。


白鷺は凍り付いた。苛立っていたその顔が、今や無表情になっている。数秒間、彼はただ春姫を見つめ、まるでその非論理的な情報を処理しようとしているかのようだった。そして、予期せぬことが起こった。彼は笑った。静かで、乾いた、少しのユーモアも含まれていない笑いだった。


「お前が?」と、彼は言った。まるでその単語自体が、冗談であるかのように。「馬鹿な冗談で、俺の時間を無駄にするな。」


彼は、扉を閉めようとし始めた。


「冗談じゃありません!」と、春姫は叫び、反射的にその扉を手のひらで押さえた。木は、冷たく、ざらざらしていた。「本気です。規則は、調べました。休部中の部を、もう一度登録するには、最低二人の部員と、一人の顧問の先生が必要だって。あなた……あと一人、必要なんですよね?」


自分が調べ上げたという告白に、白鷺の顔から冷笑的な笑みが消えた。代わりに、冷たい警戒心が宿る。彼は扉を閉めようとするのをやめたが、その視線はより鋭くなった。


「なぜだ?」と、彼は低い声で尋ねた。「何が目的だ?」


「剣道を、習いたいです」と、春姫は声を安定させようと努めて答えた。


白鷺は彼女をじっと見つめた。髪の先から、靴の先まで。まるで彼女の隅々までを値踏みし、その全てが不足していると判断しているかのように。「お前には、基礎がない。力もない。俺の足手まといになるだけだ。」


「だったら、教えてください!」と、春姫は、自分自身の勇気に驚きながら、挑戦するように言った。「あなたの知ってる剣道の技、全部、私に教えてください。」


再び、静寂が二人を包んだ。白鷺は、自分自身と戦っているように見えた。拒絶が、彼の本能。だが、論理が、頭の中で叫んでいる。これが、唯一のチャンスだと。最も望まない、この頑固な少女の形で訪れた、唯一のチャンス。


彼は、扉を押さえている春姫の手に目をやった。そして、逸らそうとしない春姫の瞳を見つめ返した。そこには、彼を苛立たせる、揺るぎない何かが宿っていた。


ついに、彼は息を吐き出した。抵抗に満ちた、冷たい息吹。


「分かった」と、彼は言った。その一言に、春姫の心臓が止まった。「入部したい、と?」


彼は扉をさらに大きく開き、後ろにある空っぽの道場を見せた。その灰色の瞳は、感情を映さずに春姫を見据えている。


「一つ、条件がある。」


彼は一旦言葉を止め、緊張が耐え難いほどに高まるのを待った。


「俺の一撃を、受けてもらう。竹刀で。防具はなしだ。それでもまだ立っていられたら、考えてやる。」

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