第1話召喚

目を閉じていたレンは、周りのクラスメイトの騒ぐ声を聴き目を開いた。そして、周囲を見渡すとレン含め大半の生徒が呆然としてた。


周囲には息を切らしてる魔法使いが囲う形で列を作っており、その後ろには甲冑を着てる騎士が控えている。


よく観察してみると、足元には巨大な赤い絨毯が敷かれ最奥には周囲より高い玉座らしき物があり、そこには豪奢な衣装を纏った中年の男性と女性が座ってこちらを品定めするように観察していた。その隣には俺達と近い年の男女が立っており、男のほうは鼻息を荒くしながらクラスの女子をガン見していた。


レンは背後を振り返ると幼馴染三人を姿があり、海翔は何かを考えこんでるのか目を閉じながら立っている。美羽と里奈は小声で何かを話し合っていた。三人に怪我はないようで、一先ず安心する。


ある程度時間が経ち騒がしかった生徒が落ち着いた頃に品定めしていた王様が玉座から立ち上がり、覇気を感じさせる声音でレン達に話しかけてきた。


「よくぞ召喚に答えてくれた。勇者様方歓迎するぞ、私はこの国を治めてるレオニス・ルミナスと申す者だ。以後よろしく頼む」


薄々感づいていたがレオニスと名乗る王様が召喚したらしいのでここは異世界で間違いないな。


落ち着いていたクラスメイトは再びパニックに陥った。


「召喚とか意味わかんない!!」

「早く地球に戻してよ!」

「なぁ、どうせドッキリとかなんだろ!?」

「なんで、なんで、なんで…」

「ざけんな!さっさと教室に戻せ!」


レオニスに文句を言うもの現実を受け止められないのか俯き何かを呟いてる者、泣き出す者と様々だ。


レンも驚いてないわけじゃないが、いきなり危険な森などに放り出される展開じゃなかっただけマシななのと、周りに自分より驚いてる人が居るからか謎に落ち着けてる。


「さっさと教室に戻せよ!」


「勇者様方の気持ちは察するが……帰還は現状不可能としか言えない」


あんなにうるさかったのが鳴りやみ、嫌な静寂が場を支配して空気が重い。


「はぁ!?召喚できるんだから帰還することもできるだろ!」


キレてる如月が叫ぶ。


「不可能な理由を話す前に、何故勇者様方が呼ばれたか教えた方が分かりやすいからな」


そう言ってこの世界アルカディアの話を始めた。


この星の名前はアルカディアと呼ばれていて自分がいるここはルミナス王国という。


この世界には人族、魔族、亜人族の三つで分かれている。東側には人間の国が多くあり西側には魔王が治めてる国があるらしい。亜人族は基本何処にでも見かけるらしいが南に獣人の王が治めてる国はあるとのことだ。北には巨大な山々が連なってとても危険な魔物大量におりとても生物が住める場所ではないらしい。


大昔に魔王を倒して以来、平和だった世界は新しく生まれた魔王のせいで再び大地は戦火に包まれた。既に数多くの国が滅ぼされており、このままでは魔族以外の種族が滅ぶと考えた教国と王国は大昔に創造神から伝わった勇者召喚を試みた結果自分たちが召喚されたわけだ。


「勇者様方を帰還させられないのは唯一神であり創造神でもおられるルクス様が召喚なされたから我らの意思で帰還させることはできぬ」


…十分前に森よりはマシだと思っていたが撤回する、これはヤバい可能性が出てきた。なんせ王様がルクスとかいう創造神を語るときの顔がキマっていた。


「質問していいですか?」


発言権を求めたのは、先程まで目を閉じて考え込んでた海翔だった。


「よいぞ」

「それでは……見ての通り僕達はただの学生です。何か特別な力を持ってたりしませんのでいきなり魔王を倒してくれと言われても不可能です」

「その心配はいらん。書物には異世界から召喚された者は、ルクス様が力を授けてくださると記されておる。これから勇者様方にはステータスを確認してもらいたい。心の中で念じればステータスは表示されるはずだ、確認したら前に控えてる魔導士に伝えてくれ」


言われたように念じるて見る。


雪城蓮 Lv1

職業:極限者

【ステータス】

HP:100

MP:100

筋力:100

耐久:100

敏捷:100

魔力:100

器用:100


【固有スキル】

・鍛錬 (自らの意思で一定の動作を繰り返すことでスキルを手に入れる、またパーティーを組んでる仲間にも少し恩恵がある)



地球ではありえなかったステータスを改めて見るとここが異世界だって改めて実感させられる。それに極限者ってなんだよ、全く聞いたことない職業だしステータス値も高いか低いのか分からない。


ステータスについて考えてるといきなり後ろから首に腕を回され話しかけられた。


「えらい大変なことになったね」

「それはお互い様だろ、それよりステータスは確認できたのか?」


顔を確認しなくても親しげに話しかけてくるクラスの男子なんて海翔しか居ないので腕を払いのけステータスの結果を聞いてみる。


「うーん蓮にならいっか、ほらこれで……見えてる?」


橘海翔 Lv1

職業:英雄

【ステータス】

HP:2000

MP:1500

筋力:1000

耐久:1500

敏捷:1000

魔力:1200

器用:1500


【固有スキル】

・全武器適正 (全武器のスキル獲得率が上がる)

・英雄の素質(魔物を倒した時の経験値が2倍になる、この効果はパーティーの仲間にも反映される)

・魔力回路(魔法を使うための回路)


【一般スキル】

・全物理耐性Lv1・全魔法耐性Lv1・炎魔法Lv1・風魔法Lv1・縮地Lv1・気配察知Lv1・魔力察知Lv1・魔力回復Lv1




「…………」


海翔のことだからチートだろうと、思ってたが全てのステータスが十倍以上もあるとは。


(はぁ、差がありすぎだろ……これが主人公補正ってやつか)


地球に居た頃からスペックがバグってたが異世界でも健在みたいだ。


「おーい!急に黙ったけど見えてるのかい?」

「うおっ?!……耳元で急に叫ぶなよ鼓膜が破けるだろ」

「わるいわるい、ただ蓮も無視するのが悪いと思うけどなぁ」

「まぁ…にしてもスキルの数が多いなこれが普通な―――」


海翔に聞こうとしたタイミングで前にいたクラスメイトや騎士の声で遮られ、目を向けると王様たちが歓喜してる。その中心には如月がおり、ドヤ顔でステータスを見せびらかしてる。


如月悠馬 Lv1

職業:勇者

【ステータス】

HP:2500

MP:2000

筋力:1500

耐久:1000

敏捷:1500

魔力:1200

器用:1000


【固有スキル】

・聖剣召喚(勇者にのみ召喚できる光り輝く剣、持つと全ステータスが1.5倍に上がる)

・勇者のオーラ(魔物を倒した時の経験値が3倍になる)

・魔力回路(魔法を使うための回路)


【一般スキル】

・剣聖 Lv1・全物理耐性Lv1・全魔法耐性Lv1・光魔法Lv1・炎魔法Lv1・水魔法Lv1・縮地Lv1・気配察知Lv1・魔力察知Lv1・魔力回復Lv1



「おおー貴殿が此度の勇者か。レベル1なのにステータス値は既に我が国の精鋭クラスとは頼もしい限りだ!」

「あ……あぁ、ふんっ!しゃーねーから俺様がこの世界を救ってやるよ!」


召喚された時はあんなに反抗していた如月だったが自分が特別だと分かったのか調子に乗る。そんな如月を見て男子は悔しそうに不貞腐れ、一部の女子は媚びを売り始める奴までいる。


「うへぇーよりによって如月が勇者かぁ…こりゃーこの世界終わったかもしれないね……」

「そうだな、日頃から学校サボってた、あいつがはたして真面目に訓練するのか。俺には少なくとも想像つかないな」


海翔と話してるうちにも次々と前に出て行ってる。見た感じ如月や海翔ほどじゃないが他の奴もしっかり強い。


「そろそろ俺達も行くか」

「そうだね」


二人で魔導士の前に行き海翔から見せると魔導士の人は目を見開き驚いており、そのすぐ後ろには学者なのか白衣を着てる人が凄いスピードで書き写してる。


「勇者様にも劣らないぐらい強者でございますね」

「あはは、それはどうも」


海翔が終わりレンの番になる。


「次は貴方ですね、さぁ見せてください」

「極限者とは何か知ってますか?」


他の生徒は槍術士や聖騎士など想像しやすいが極限者なんて聞いたことなかったので魔導士に聞いてみる。


「…あー極限者ですか、言い伝えでは過去にも居たみたいですがステータスは一般人と変わらずスキルに関してはその辺にいる子供ですら3つは持ってるのでハズレ職とされてますね。もうステータス閉じていいですよ」


極限者と伝えたら憐れむような眼差しを向けながら説明してくれた。レンは魔導士の説明を聞き異世界でも才能がないことに思わず顔が引きつる。


(俺のステータスが低いのは薄々思ってたがここまで悲惨とは思ってなかった…)


これから訪れるであろう困難にこのハズレ職で生き残れるのか考え、心の中で溜息を吐く。



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外れ職《極限者》、限界を超えて最強へ しろん @siro001

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