「俺のことは置いて先に行け」といったのに生きて帰っちゃいました

小文夜久

第1話この場合ってどうすれば

「おいおい。こっからどうすればいいんだよ。」

俺はある光景を見てあることで悩んでいた。この事件?が起こる約2時間前…今日も俺たちは冒険者として討伐クエストを受けようとしていた。おっと忘れていた。俺の名前はベルスティア・ベルクだ。そしてこいつらは俺の仲間の魔術師のラスティー・ミア。格闘家のイリアル・アルエ、最後に治癒士のフィアだ。フィアは物心ついた時から親はいずにひとりで過ごしており、自分の名前しか知らないのである。俺たちは冒険ギルドでも指折りのチームだ。もしかして全員女だからハーレムとか期待してるのか?そんなことはまったくもってない。ミアは俺に向かって練習と称して魔法を当てようとしてくるしアルエは俺のことをサンドバックにしてくるしフィアは、なにもしないわ。だってまだ10歳だもん。そんな薄汚れた心は持っていない。もちろんこれは心に秘めておく。口に出したら殺されるからな。そんな俺らが受けるクエストはワイバーン討伐だ。難易度はDから始まりSまである中のAのクエストだ。それなりに実力がないと受けれないクエストでもある。俺たちはクエストを受け、そのワイバーンがいる砂漠地帯へと向かう。作戦はいつも通りミアが魔法でワイバーンを撃ち落とし、俺とアルエで討伐する。そんなことを考えながら歩いていると大きな影が見えてくる。そうワイバーンである。ミアが

「ファイアーバレット」

魔法を連射する。魔法に直撃したワイバーンはそのまま地面に落ちてくる。そこからは作戦通り上手くいき、ワイバーンは30分程度で討伐された。ワイバーンの素材を集め帰ろうとした瞬間、奥の方で砂埃があがってるが見えてきた。あの砂埃のあがり方はまさか、

「進軍して来てるのか!?」

どうやら俺の言葉が口から漏れていたのを聞いたフィアたちは焦り始める。軍隊は鎧を着ておりその鎧は魔法を打撃もほぼ攻撃を通さないからだ。簡単にいえば無理ゲーというやつである。このままでは全員死ぬのは目に見えている。こんな時はどうすればいいんだ。フィアはまだ若くて伸び代がある。ミアは貴族だ。アエルはアエルの親から守ってくれるのが条件でこのチームに入ってもらっている。俺はこいつら全員ここで死なせる訳にはいかないのである。もうしょうがないかこうするしか手はない。

「俺のことは置いて先に行け!!」

という俺をみんな心配そうな目で見てくる。俺だって心の中では怖い。だがこいつらにそんな弱いところを見せたらみんな残ってしまう。ここはカッコつけないとな。こういうの死亡フラグっていうんだっけ。そんなことはどうでもいい。

「早く行け!俺の心が変わらないうちに。」

それを聞いたミヤはなにかを察したようにこちらを見て頷き、

「あいつが命を張って助けようとしてるんだ。早く逃げるよ。」

ミアはフィアの手を引っ張りながらアルエにいう。フィアは泣きながらとどまろうとするがミアはゴリラだ。そのまま連れて行かれる。アエルも一瞬迷ったがミアの方へと向き直し走っていく。

「お前らは死ぬなよ。」

俺だって正直怖い。20代で死ぬのは嫌だ。俺は目を瞑る。だって見たくないだろ。怖くてちびるくらいなら目を瞑ったまま死んだ方がマシだ。俺はどんどん近づいてくる砂埃を目の前に目を閉じた。だがなにも起きない。それはしばらく経っても変わらない。すると俺の近くから

ヒヒーン。

モー。

ワンッワンッ。

と聞こえてくる。俺が恐る恐る目を開けるとそこには猟の帰りであろう猟師がいた。

「紛らわしいわ!」

俺が猟師に向かってツッコむと猟師は戸惑いながら

「お前どうしたん?」

「いや。他国からの進軍だと思いました。」

「そうやったんか。大変やったな。ほなな。」

といい馬を引いてそのまま帰っていった。3分くらいだろうか。俺は完全に放心状態になっていた。3分経った瞬間に出た言葉が

「おいおい。こっからどうすればいいんだよ。」

であった。本当にどうすればいいんだろうか。このままなにもありませんでしたで帰るのは嫌だ。だって恥ずかしいもん。こうなったらと思いつくことが何もない。俺はそういうのに頭を使えないタイプなのだ。こういうときってボロボロになって帰った方がいいのだろうか。

「とりあえず町の方に歩いて行くか。」

そういって俺は冒険ギルドの方へと少しずつ戻って行くのだった。

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「俺のことは置いて先に行け」といったのに生きて帰っちゃいました 小文夜久 @fumino1204

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