これはきっと友情

上貝 颯空

これはきっと友情

私は教室の窓からグラウンドを眺めていた。

高かった太陽もいつの間にか沈みかけ、窓から斜陽が差している。


私の視線の先では、高いポニーテールが揺れていた。



バタンッ!


「美玖ー!!」


勢いよく教室の扉が開いた。

声でわかる。

拓也だ。

私はパッと顔を上げた。


「どうしたの?」

「明日提出の課題忘れてたんだよー。頼む美玖様、写させてください!」

「またぁ?」


まあ良いけど、と言って私は課題を渡す。

ありがとマジ神、と拓也が言って踵を返す。

その歩みが途中で止まった。


「どうかした?」


謎の期待に私の胸が跳ねる。

しかし拓也はグラウンドを見ていた。


「んー?や、絵里いるなって」

「…そ」


上向いていた気持ちが一気に沈んだ。

そんな私の様子にも気づかず、拓也は話し続ける。


「やっぱ絵里可愛いよなー。俺今さ、絵里に告ろうか迷ってんだよね」


彼の視線の先では、高いポニーテールが揺れていた。


拓也はすごく素直で、良いやつだ。

だからこそ、私が応援していると信じきっている。

私も、応援したいと思っているのだけれど。



「あ、やべ。部活抜けてきたから、早く戻んないと」


じゃーね!と言って慌てて出て行った拓也を、私は追いかけなかった。


いつの間にかぎゅっと握っていた手を、私はゆっくりと解く。

手のひらには爪の跡がついていた。

私はじぶんに言い聞かせるように繰り返す。


私と拓也は友達だ。

拓也の恋を応援しよう。

大丈夫。

私はポニーテールにした髪をくるくると弄りながら自分に言い聞かせる。


これはきっと友情。

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