屋根の上で君を待つ

もち雪

屋根の上で君を待つ

 暗い闇の中、彼女は教会の鐘の音響く、その場所から現れる。


 彼女は聖女で、世界を照らし出す光。


 僕の前に現れた、空の北極星と対をなす、地上の希望の星。




 とても長い屋根を静かに歩いてやって、彼女は、僕のもとへ現れる。


 讃美歌を声高らかに歌ったり、世界を救うただ一人、唯一の人の話をしたりする彼女。


 歌声は、羽のように軽く、温かく、そして指先まで、きっちり伸ばす、星を掴む様に。時に、大きな声で笑ったり、涙をためて、そしてあえなく決壊し大粒の涙を流したりする。



 でも……、いつも白い制服の騎士が現れると、遠い地上からの視線に気づき、彼女はその騎士と一緒に帰って行く。


 手をつなぎ、時には腕を組んで……。



 僕はここに居る幽霊。


 彼女は僕を空へとかえす、聖女様。

 彼はそんな聖女様の愛する騎士。


 君が帰る時、僕が君を思う、愛しいって気持ちに気づいてくれれば、せめて……僕のそんな気持ちをのせた、視線に気づいて振り返ってくれれさえすれば、この世界から成仏と言う名の、旅立ちが出来るかもしれない。


 でも、僕はまだこの星降り注ぐような夜空の下で、君とこうして居たい。


 そして知りたい。


 君はあとどれくらい、僕の所へ来てくれるのか? 


 それがわからない内は、僕は成仏できない。


 僕にはそれも心残りだからだ。


 終わり

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