学校の帰り道も昨日と同じように雨は降り続いて。傘の先で跳ねる水滴の音が、まるで小さなリズムを刻むドラムのように耳に残る。肩がかすかに触れた瞬間、胸の奥が熱くなる。それは言葉にできない感覚で、ただそこにあるだけの存在の温度。私たちは沈黙のまま歩いていたのに、沈黙は重くも軽くもなく、ただ自然な息遣いとして流れていった。


通りの光が濡れたアスファルトに反射して、世界は小さな宝石のように揺れて見える。傘の下で、私はふと自分の手を見た。手のひらの湿り、指先の冷たさ。隣にいる誰かの手が近くにあるのか、ないのか、それすら曖昧で、けれども、冷たい感覚。


笑い声がまた遠くから届く。向こうから来る波のように揺れて、私に何かを語りかけているようで、でも決して直接的な言葉ではない。それはまるで世界の一部がそっと私に触れているような感覚であり?


雨粒が頬を撫で、髪を濡らす。傘の中の空間は小さく、閉じられた世界だけれども、その中で私は自由に呼吸できる。小さな傘の下で、心の揺れをそっと感じられる違和感。


「もう少し歩こうか」――その言葉は出なかったけれど、歩幅を自然に合わせることで、私たちは黙って同じリズムを所有していた。雨に濡れた靴底がアスファルトを叩く音、傘の布が揺れる音、そして私の心臓の微かな鼓動。すべてが交わり、ひとつの流れとなる。


遠くの世界や、過去の出来事や、未来の不安――それらすべてが、今この雨の下では無意味になる。重要なのは、ただここにいる自分と誰かの存在の重なり、その感覚だけだった。


傘の縁に伝う水滴が目の前で光る。私は目を細め、微かに笑った。心の中のもやもやや迷いが、少しずつ溶けていくように感じる。相合傘の小さな世界は、私の

小さな居場所のように雨を受け止めるようだった。

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