学の歩み――一月の議場

2026年1月30日 大分市・県議会議事堂。

 冷え込み厳しき朝、議員たちは議場に集まり、報告と新たな提案を待っていた。


 一名の議員が立ち上がり、静かに声を響かせる。

「諸君。県の研究機関より報告があった。『電子機械工学』――これが完了した」

 ざわめきが議場を包む。計測機器の精緻化、通信の強化、各産業への波及可能性――数字にすれば冷たい成果に過ぎないが、議員たちの胸には確かな重みをもって響いた。

 同じ議員は続けて述べる。

「さらに、本日より新たに『機械式計算機』の研究に着手することを提案する。情報の整理と管理を効率化し、軍政、経済、教育の基盤を整えることができる」

 議長の合図とともに、議場から声が飛ぶ。

「電子機械工学の成果ちゅうても、すぐに役に立つんかい?」

「いや、これは産業にも軍事にも効くっち。そんための投資やっち」

「ばってん、機械式計算機っちゅうたら聞こえはええが、ほんまに使えるんか? わしらの歳じゃよう分からん」

「そら新しいもんは最初わからんが、それでも他所より先に手ぇ出さな置いてかれるばい」

 議論は割れ、議員立法としての討議は熱を帯びた。前進を称える声と慎重を求める声。実利を急ぐ派と将来性を重んじる派。その間で、慧が静かに口を開いた。

「財務の観点から申し上げます。電子機械工学の成果は直ちに金銭を生むものではございません。しかし、軍需・通信・鉱業に必ずや寄与いたします。浪費を恐れるあまり投資を停めれば、他県との差は広がるばかりです。持続可能な範囲で投資を積み重ねることこそ肝要かと存じます」

 和巳も続ける。

「教育や医療の現場でも、機械式計算機の導入は効果を発揮します。成績や医療記録の管理が改善されれば、県民の暮らしに直接的な影響を与えます。新しき技術は、遠い未来の夢ではなく、身近な支えとなり得ます」

 議員たちは資料に目を落とし、互いに声を掛け合いながら討議を重ねる。効率性や費用対効果を指摘する慎重派、将来の基盤構築の重要性を強調する推進派――議場は議員立法ならではの白熱した論戦に包まれていた。

 最後に、報告・提案した議員は締めくくった。

「電子機械工学は我らに新たな産業と防衛の道を示した。機械式計算機は、その知を整理し、活かす器となる。小県大分が未来を切り拓くには、この研究を議員立法として推し進めるほかない。皆の意見を承り、ここに可決する」


 議場は承認の拍手に包まれた。技術という見えぬ力が、大分を守る盾となるか――その問いが、議場全体を覆っていた。

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