「ブクマ0からの異世界転生 〜俺の小説、誰か読んでください〜」

@jadn

第1話 読んでくれない


「ブクマ、ゼロ。」


 スマホの画面を見つめながら、俺は呟いた。

 何度もリロードする。更新ボタンを鬼のように連打する。だが結果は変わらない。俺のカクヨム作品のブックマーク数は――ゼロ。


 ゼロだ。まっさら。白紙。読者の気配すらない。


「……嘘だろ? 俺、昨日の夜、渾身のハーレム異世界学園バトルラブコメ投げたばっかだぞ?」


 しかもタイトルは「勇者パーティーを追放された俺、なぜか異世界学園の最強教師になって全員美少女で世界救う件」。

 どう考えても流行りのキーワードは全部入ってる。

 それなのに――ゼロ。読まれない。


「……なろうならまだ読まれるのに。」


 そう。俺は元々「小説家になろう」で活動していた作者だ。

 なろうでは一応、日間異世界転生ランキングに載ったこともある。ブクマもそこそこ。読者から感想だってもらえた。

 だが、浮気心を出して「カクヨムでも俺ならイケる!」と乗り込んだ結果がこれである。


 カクヨムの壁は高かった。というか鉄壁だった。

 門の前に立っても、門番が冷たい視線で言う。


「お前、なろう出身か?」


「は、はい……」


「帰れ。」


 そんな世界だった。


 俺は机に突っ伏した。

 眠い。疲れた。もう何もしたくない。

 カクヨムのランキングからはじき出され、心はボロボロ。

 このまま眠ったら、二度と目覚めなくても――


 ――目が覚めたら、俺は異世界にいた。


「……おい、嘘だろ。」


 見渡す限り、草原。空は青く、鳥が舞っている。

 そして、俺の目の前に一人の少女。長い銀髪に、碧い瞳。どう見てもファンタジー世界のヒロイン。


「あなたが……伝説の作者様?」


「作者?」


 少女は真剣な表情で言った。


「はい。この世界を救うのは、物語を書く者。『小説家』だけなのです!」


「……………………は?」


 こうして俺の、ブクマゼロから始まる異世界転生ギャグライフが始まった。

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