地図にない村「杉沢村」と「怨搦迦遺供禰」について

鋏池穏美

はじめに 本作【地図にない村「杉沢村」と「怨搦迦遺供禰」について】のおことわり


 はじめましての方もいるかと思いますので、まずはご挨拶を。東京の片隅で細々と物書きをしております鋏池穏美つかいけやすみと申します。本職はまた別にあるのですが、趣味として続けてきた執筆が少しだけ形となったのが今年の五月。コンテストへ参加していたホラー長編「禍系図」で特別賞を受賞することができました。執筆を始めて二年半ほどの若輩者ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。


 ではさっそく本題へと入らせて頂きます。あらかじめ本作品について断っておきますが、この作品を読み進めることで呪われる──そういった類のものではありません。※ただし呪いや怪異的な表現が含まれますので、苦手な方はここで閉じてください。


 本作品は、いわゆる都市伝説として語られてきた「杉沢村」に関連したもの。

 私自身が体験したことを一人称の視点で記し、その過程で見聞きした資料等を引用する形で綴っております。※登場の人物名は全て仮名であり、私は筆名。地名や施設名などは一部伏字にしております。


 杉沢村についてはご存知でしょうか? 青森県の山中にあったとされる地図に載らない村。一九九〇年代後半から二〇〇〇年代初頭にかけ、主に匿名掲示板から広く拡散された都市伝説です。

「村人全員が発狂し、殺し合いの末に廃村となった」

「一人の青年が村人を襲い、村人全員が殺された」

「軍の実験場であり、何らかの理由で消された」

「足を踏み入れると呪われる」

「最初から存在しなかった」

 このように諸説入り乱れており、そのどれもが確証に乏しいまま、長らく人々の好奇心を煽り続けてきました。

 ただ、昭和期に刊行された郷土誌や古い地図には「杉沢」という地名がかすかに記録されており、完全な虚構とも言い切れません。


 この杉沢村についてですが、実は私の生家がある集落からほど近い、「杉沢地区」と呼ばれる廃集落がモデルになった──とも囁かれています。

 と言ってもあくまで噂は噂。地元の一部の人たちが口にしていただけで、私は真剣に受け止めてはいませんでした。けれど今となっては、あの廃集落こそが杉沢村だったのだと確信しています。


 そう思い至るまでの出来事を文章化したものが本作品です。当時「杉沢村」という都市伝説に魅了された方も、本作品ではじめて知ったという方も、最後まで見届けていただければと思います。

 

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