愛の枷
@19910905
第1話
口に出せなかった想い ― 最期の告白
夜の闇が、二人を静かに包み込んでいた。
女は縛られ、男の前に立つ。絶命の間際、目には恐怖と悲しみが入り混じる。だが、胸の奥で渦巻く感情を抑えきれなかった。
思い出が蘇る。ふたりで笑い合った日々、些細な喧嘩、手を繋いだ温もり。どれもが、もう二度と戻らない時間だとわかっていた。
「愛してた……ありがとう」
震える声が、夜に溶けた。男は女の言葉を聞き、刹那、息を止めた。
彼女の瞳に映る自分の姿、柔らかく笑う唇、手を伸ばしたくなる衝動――それを握り潰し、命を奪うことしかできなかった現実。
女はその瞬間、静かに息を引き取った。
男の胸に、重い枷が残る。殺したのは自分なのに、女の言葉は許しであり、同時に逃れられない鎖となった。
彼女の愛と感謝は、命を越えて男の心に刻まれ、後悔と痛みとして残る。
誰にも打ち明けられない、しかし胸に刻まれた確かな想い。
女は死に際に、愛していたと伝えたことで、男に最後の贈り物をした――命を越える、深く重い贈り物を。
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