母親を待った少女の奇跡

@19910905

第1話

幼い少女に起こる奇跡


四歳の紗良は、今日も母の帰りを待っていた。

玄関の扉の向こうに母の姿が見えると思い込み、小さな手を伸ばす。

周囲の大人たちはため息混じりに言う。

「帰ってこないよ。おじいさんのときもそうだっただろう?」


紗良は首を横に振る。

「それは、誰も待ってあげなかったからじゃない。」

小さな胸の奥で、紗良は母も祖父も、自分が待つ間、孤独だったのだと感じていた。


その日、庭先で紗良は金色に輝く蝶を見つける。

母が好きだった白い花のそばに舞い降り、指先に止まった瞬間、紗良には母の声が囁くように感じられた。

「もう大丈夫よ、ずっとあなたを見守っているわ」


紗良は胸の奥でそっと手を合わせる。涙が頬を伝う。悲しみはまだそこにあるけれど、光も感じられた。


その時、背後から温かい手が紗良の肩に触れた。

振り返ると、父の顔があった。静かに、しかし力強く、紗良を抱きしめる。

「よく待ったな、紗良。母も、祖父も、ずっと見守っているんだよ」


父の胸のぬくもりに包まれ、紗良は深く息をつく。悲しみの中にも、安心と愛が広がった。

母も祖父も去ってしまったけれど、家族の愛はここにある。紗良はその事実を、初めて心から理解した。


小さな胸に奇跡が芽生える。

命は去っても、愛は消えない。見えなくとも、確かに存在する――紗良は知ったのだった。

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