The Day After …

雨宮 命

The day after 黒歴史

 今日もわたしは黒歴史を作った。今日のは特にひどかった。

 わたしは、人前で話すのが苦手だ。すぐにあがってしまって、ろれつが回らなくなる。

 

 ことの顛末てんまつはこうだ。

 四時間目の現代国語の授業で、短い小説を書いてそれを提出するという課題があった。わたしは、教師がそれで現代の高校生の、なんというか、表現力的なものを把握しようとしているのだと思っていた。

 現代国語の教師は明朗快活な若い女性で、それだけに男女問わず生徒からの人望は厚い。わたしは彼女を、決して舐めていたわけではない。だが、どうせ彼女にしか見られないのだ、少しくらいふざけてしまえという気持ちが湧いてしまった。


 正直、この件は思い出したくない。だけど、思い出さずにはいられない。勝手に頭の中に広がってくるのだ。

 少し前にはやったアニメのオマージュや、人を選ぶネットミーム。それに、ちょびっとBL。わたしは千文字に満たない小説に、これでもかとそれらを盛り込んでしまった。

 

 そして、課題しょうせつを提出した翌日、つまりは今日の四時間目の授業の開始そうそう彼女が口にした言葉がこれだ。

「今日は、皆さんの書いた小説を読みあって、新たな視点を知りましょう」

 慌てて提出を取り消そうとするも、もう遅かった。


 もう、この後のことは言わずともわかるだろう。わたしには仲のいい――特に交流のあるクラスメイトがいないから、表立ってバカにされることはなかったけれど。それでも。ぼっちなわたしには、ひそひそとチラ見されながら話されるのも、逆に気まずそうに眼をそらされるのもそれなりにくらうわけで。


 大声で笑う男子とこわばった笑顔で事態を収拾させようとする教師―—教室の風景がフラッシュバックする。わたしは思わず叫ぼうとするが、今が深夜であることはずっと寝れなくてスマホを見続けているから思い出すまでもなく、すんででやめる。


 わたしは、こういう〈黒歴史〉を忘れるのが苦手だ。今までの傾向からして、今日のことは少なくとも向こう三年は悔やみ続けるのだろう。


「あ゛ー、しにた」

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