第2話 罪人の訓練


「このように、手の中心に魔力を集めるよう意識をしてください。集まる力が強いほど、強度も上がります」


 子羊の護衛隊には多くの隊員が所属していますが、そのほとんどが魔力を使いこなせません。しかし任務は完璧に遂行しなければならず、ナインシールズに選ばれた隊員が直接指導し育てます。


「…………」


 ナインシールズはみんなの憧れの的なのは確かです。しかしそれは大罪人であるフォルには向かない感情でした。

 フォルの魔力による指導はやる気なく取り組む隊員の姿が目立ち、成果もあまり出ていません。まるで組織全体が、フォルをナインシールズと認めないと示しているようでした。


 もちろんピトラもその一人です。嫌々ながらも一応言われた通りやってみるたちです。ピトラは非常に真面目で正義感が強い若者ですから、罪人は許せないのでした。


「難しい場合はシールをお渡しします。手のひらに貼って、そこに魔力を集めるイメージをしてください」


「喋るんだねあの罪人」

「……つか声初めて聞いたし」

「だよなぁ、監視役なんてついてない。あんなのと一緒なんてごめんだよ」

「前の人みたいに消されるかも。本当に怖いわ」


 後方で訓練に参加するのは、6名の監視役です。もちろん彼らの監視対象はフォル。いつまた魔力を暴走させるかわからない彼の側にいることは、監視役たちにとって恐怖と不安でしかありません。


 それに、不安要素はそれだけではないのです。フォルには常に6名の監視役がつきますが、前任の監視役たちはある夜に突然姿を消してしまったのです。


 そうして緊急招集として、ピトラたちがフォルの元にやってきました。6名の行方はわからないまま。フォルも知らないようで何も答えられませんでした。

 人々は、フォルがその6人を消してしまったのだと恐れました。監視役が行方不明になるのはこれが初めてではありません。

 いずれも全てフォルが消したことになっています。それに対してフォルは、否定も肯定もしませんでした。


「あ、できた」

「私も」

「技術はあるんだよねぇ、あの罪人」


 フォルはその圧倒的な魔力と実力でその立場に居続けることができてきました。彼の力は子羊の護衛隊という組織の中では認められるに値するものだったからです。



「魔法防御壁が張れた方からこちらへ。さらに強度を上げる訓練に移ります」


「上出来です」

「やった! できた!!」

「凄ぇじゃんお前! これまで全く制御できてなかったのに」


 フォルの指示に従い訓練を行うと、面白いほどに魔法は上達していきました。

 そして訓練過程を終える頃には、最初はやる気を示さなかった隊員の全てが、フォルの話を真剣に聞き、訓練に取り組むようになります。その能力を持って、フォルは隊員たちの信頼を集めていくのです。それの繰り返しでした。





 ゴーン、ゴーーーン!!




「何の音?」

「バカ、緊急要請だよ」

「緊急要請って……」

「攻撃されてんだ」


 ある日の訓練中のことです。子羊の護衛隊の施設に爆音の鐘の音が鳴り響きました。

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