22話 裏取引②
馬車の中に立ち込める白煙。火炎が立ち込める密室で、ナルニアは自身の焦げた肌を見ていた。その皮膚は、徐々に再生していく。
【黄金の天秤】党首・ナルニア。彼は巧妙に人に擬態しているが、実は魔物・スライムであった。どろどろに溶けた体が、元の実態を形作る。
「さてと、死んだかなぁ」
ナルニアは、醜い笑みを浮かべる。火炎立ち込める馬車の席に、ゆっくりと腰掛けたその時。
ザバン
炎が裂け、熱風が舞った。その先には、魔剣を携えた大男が一人。
リアム王子の使者・元
「俺を殺すには、火力が足りない」
「生きてたんだー」
ナルニアは、あまり感情のこもっていない声で、ぼそりとつぶやいた。だが、その顔はすぐ、炎の中に飲まれていく。
パン、パン、バーン
「はやく逃げないと、死んじゃうよ」
ナルニアは、にやにやとカインを煽った。実際、馬車の中は一酸化炭素で充満し、常人では立つことすらできぬ状況であった。どんな屈強な人間でも、この状況で生命を維持できるのは、もって数分といったところだろう。
煙が、肺や喉にからみ着く。しかし、カインは、そんな状況にもかかわらず、いたって冷静であった。
身体の中にあるわずかな酸素を血液に巡らせる。剣を握る手に力が込もる。
すると、腕の筋肉がありえないほど
これで決める。
「
ヴァリリリリリリリリ、ヴァォォォーーーン
空気が割れ、神の
身体が投げ飛ばされる。外気にさらされ、炎は段々と火力を落としていた。カインは、肺いっぱいに呼吸を吸い入れ、剣を振りかぶっている。
まずい、体勢を整えないと……、身体をのけぞらせようとナルニアが自身の手を動かそうとする。が、……。
その時、ナルニアは初めて気づいた。すでに、自身の身体は半分に切断されていたということに。
◇◆◇◆
ナルニアの身体が、どろどろと馬車から崩れ落ちていく。カインは、馬車の外に飛び降りた。のどかな草原に、穏やかな風が吹き抜ける。木漏れ日が差し込むその陽だまりの下、かろうじで人の姿を保っていたナルニアがいた。
カインは、長剣の先端を、ナルニアの首に突き立てる。
「取引だ、ナルニア。拒否権はない」
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