両片想い百合(主従)の間に挟まる触手の本【コミティア154サンプル】

犬好モノ

サンプル

「エリス、今日はいつもの場所じゃないのか?」

銀髪碧眼の獣人――ルナが、狼のような尾を緩やかに揺らしながら問いかける。

ひゅう、と唐突に吹き抜けた風が、ルナの立ち耳と無造作に伸びた銀髪、遅れて、少し前を歩くエリスの結い上げられた金の髪を撫でていった。

「ええ、この先にとっておきの場所を見つけたの」

エリスはぱっちりとした瞳を楽しげに細める。緑がかった茶色い瞳には、期待の色が滲んでいた。

エリスは国有数の商家の娘。そして専属で彼女の護衛を務めているのがルナだ。

ピクニックに行きたい――そう言い出したエリスは、邸宅から程近い、この森を行き先に選んだ。

いつもならば姉や専属メイドを伴うところだが、今日は〝一人がいい〟と主張したために、護衛としてルナのみが付き添っている。

だがその実、この状況はエリスが仕組んだものだった。

慣れ親しんだ場所とは言え、エリスが一人で歩くなど、ルナが許さない。それを分かっての〝一人がいい〟である。

素直でないエリスなりの誘い方だった。

先日のピクニックで偶然見つけた花畑。青みを帯びた白い花々が、風にそよぎ光を反射する様は、エリスの目にはまるで想い人――ルナそのもののように映った。

エリスはその美しい景色をルナと分かち合いたいと思い、今こうして彼女を誘い出している。まさに、天邪鬼なエリスらしい好意の示し方だった。

「嫌だったら付いて来なくて良いわよ」

「まさか。エリスと一緒なら、どこでも行くよ」

そう言いながらルナが追い付き、エリスの横顔を覗き込む。鋭い犬歯を見せ、悪戯っぽく笑った。

「……軽薄」

「軽薄なものかよ。私はいつだって本気さ」

ルナは片手に専属メイドお手製のランチバスケットを掲げ、くるりとその場で回って見せる。銀の髪が木漏れ日にきらめき、軽やかに踊った。

「エリスと二人きりのランチタイムに、浮かれて足が縺れそうだ」

「……あなたって、どうやってそんなセリフを考えているの?」

呆れたように眉を寄せるエリスに、ルナは首を傾げる。

「エリスは学があるやつの方が好きだろう?」

「あなた、誰にでも言ってそうじゃない」

ルナは尾を一振りし、少し考え込んだ末ににんまりと口元を緩めた。

「……やきもち?」

「違うわよ!」

図星を突かれたエリスは、ぱっと頬を染め、眉を吊り上げて歩を早める。

その背を追って再び並んだルナが、真っ赤に染まった耳に軽い調子で囁いた。

「むくれちゃって、エリスは可愛いなぁ♡」

「軽口禁止」

「軽口じゃないって」

素直になれない返答を繰り返しながらも、諦めて歩を緩めるエリス。それを可愛らしく感じたルナは、小さな手に自身の手を伸ばす。僅かに緊張しつつ、そうっと。

――そして、その手が繋がれようとしたその瞬間。ぴくりとルナの耳が跳ね上がる。

足を止めたルナは耳を澄ませ、低く言った。

「エリス、こっちはちょっと嫌な感じだ」

「え?」

続いて立ち止まったエリスの横で、ルナの眼差しが鋭く光る。

「小動物の気配が、急になくなった」

通い慣れた森に肉食の大型獣はいないと、この地域の誰もがよく知っている。だがその常識とは裏腹に、ルナの第六感が何かの危機を察知して警鐘を鳴らしていた。

「一旦戻って――」

「し、使用人のくせに、わたくしに指図しないでよ」

どうしても花畑を見せたい。その気持ちが先行したエリスの生意気な物言いに、ルナは眉を下げる。

素直ではないが優しいエリスが、そんな言い方をするのは、それほど切実な理由があるから。

それを理解しているルナは迷う。歩みを再開したエリスを、無理矢理にでも帰らせるのが正解か。それとも、決定的な事象がない以上はもう少し進んでみるべきか。

護衛としての理性と、想い人の望みを叶えてやりたいという願望がせめぎ合い、ルナの判断を鈍らせた。

そうこうしている内に、草木の影が途切れ、開けた場所へと辿り着く。

やはりルナがどんなに耳を澄ませても、鳥の囀りも、虫の声も、羽音さえ聴こえない。

代わりに、湿り気を帯びた空気と、鼻につく甘ったるい匂いが漂っていることに気が付いた。森には本来有り得ない、不自然な気配。つまり、決定的な事象だった。

「エリス、やっぱり戻ろう。ピクニックは今日じゃなくても出来るだろ?」

ルナはエリスの行く先を塞いで、目線を合わせて静かに諭す。

「でも……」

エリスは小さく唇を噛んだ。美しい花畑が、いつまで花畑のままでいてくれるのか分からない。どうしても今、ルナに見せておきたかった。けれど、その気持ちを押し通して危険な目に遭っては、元も子もない。「そうね」エリスは渋々と、しかし納得したように頷いた。

「よし、明日にでもまた来よう」

ルナは安堵の笑みを浮かべて、そのまま自然にエリスの手を取る。

「な、ちょっと――」

羞恥に抗議の声を上げようとしたエリスだったが、思いの外真剣なルナの横顔に、口を噤んだ。

ルナはぴんと耳を立て、エリスの足場に気を配りながら最短ルートで道を戻っていく。

――思ったよりも、状況は悪いのかもしれない。

そんな恐怖で、エリスは繋いだ手を強く握り直した。

「今日はお屋敷の中庭で食べるのも良いんじゃないか?」

ルナはエリスの緊張を感じ取り、振り返ってまた笑顔を見せる。

「そうね、そうしましょう」

努めて明るく返したエリスだったが、その空気は一瞬で破られた。ルナの足が、ピタリと止まったのだ。

「ルナ?」

「……思ったより、まずいのがいたな」

ルナの視線の先に、蠢くものがあった。木の根に絡み付くように広がる、赤黒い触手。一本一本がぬめりを帯びて、不気味に光っている。とろとろと滴る粘液からは、鼻にこびり付くような甘ったるい匂いが漂っていた。

エリスはそのあまりのおぞましさに息を飲み、一歩後ずさる。

その足音を合図とするように、四方の茂みからざわりと葉擦れの音が広がった。

(囲まれてるな……)

 ルナは立てた耳をぴくぴくと左右に傾け、状況の悪さに内心舌打ちする。

「抱えるぞ」

「え? ひゃぁっ⁉」

返事をするより早く、エリスの身体は軽々と抱き上げられる。思わずルナの首にしがみついたエリスの視界の端で、ランチバスケットが中身をこぼしながら転がった。

「よっ、と…っ!」

二人に迫った触手を避けるため、ルナが後ろに数歩飛び下がる。追ってくる触手から飛び散った粘液が、地面の草花を濡らしていく。

執拗に続く触手の追尾を、エリスを抱いたまま軽やかに躱すルナ。だが、その碧眼には次第に焦りの色が滲み始めていた。

(逃げ場がない方に誘い込まれている)

触手は本能で活動する半動物性植物で、知能は持たないとされている。ルナは、そう油断していた己の甘さを呪った。

ルナ一人であれば、木の上を渡っていくことも出来ただろう。だが、ルナの腕の中にはしがみついて震えるエリスがいる。落とさぬように抱えながらでは、ただの跳躍でさえも制限されてしまう。

ルナが身を翻しながら必死に進路を探しているうちに、触手の動きはじわじわと攻撃的になっていった。うねるたびに空気を切る音が鋭さを増し、狙いも正確になっていく。

ついには、ルナの腕に抱かれるエリスを叩き落とそうと、触手が大きくしなり――振り下ろされた。

「……っぐ!」

咄嗟に身を捩ってエリスを庇ったルナの背に、粘り気を帯びた衝撃が走る。

「ルナ!」

負傷させる程の威力ではなかったものの、ルナの体勢は大きく崩された。そして、その体勢から立て直すより早く、別の触手が低くうねり込み、ルナの膝裏を狙う。

バチィン‼

大きな音に続いて、ルナが崩れ落ちるように片膝をついた。

その隙を逃さず、複数の触手が絡み付くようにエリスへと伸びる。

「やっ」

「エリス‼」

完全に引き離される前に、ルナが強くエリスを抱き寄せた。

「うわっ!」

安堵したのも束の間、ルナの手足にもぬるりと触手が這い、二人まとめて雁字搦めにされてしまう。

さらには枝葉の間で吊り下げられたような格好にされてしまい、身動ぎするための支点すら奪われてしまった。

(……詰んだ……)

状況を冷静に俯瞰し、ルナは早々に逃走を諦める。思考は主人をどう守るかに切り替え、必死に取れる手段を探し始めた。

「ごめんなさい、ルナ」

「エリスは何も悪くない。護衛である私の責任だ」

不安げに漏らされた声に、ルナは短く断じて唇を噛む。

抱え上げられた二人は、互いの身体を密着させる形で固定されてしまっていた。それも、エリスの股の間にルナが収まった状態で。

己のはしたない姿に気付いたエリスの頬が、みるみる朱に染まっていく。そんな顔を見られまいと、エリスはルナの首にしがみ付いた。

「ひゃうっ」

唐突に響いたルナの悲鳴に、エリスは伏せた顔を上げる。

エリスの視線の先――ルナの背面で、ぬるりと動き出した触手が銀色の尾を伝い、根本をきゅうきゅうと扱いていた。

「あひゃ、ひぁっ」

笑いを堪えるルナの高い声。場面にそぐわないその響きが、エリスの困惑を誘う。

「あっ、ひぅっ、あひっ」

ルナの声を耳にしているうちに、エリスは〝尾を触りたい〟と言うたびに断られたことを思い出した。そして、その理由が今まさに眼前にあることを理解する。

「……しっぽ、弱かったのね」

「ちが、っひ、あっ、あははっ、だめらっ、くしゅぐったぃ……!」

二人の気が僅かに緩んだとき、頭上に新たな触手が現れた。彼女たちを拘束する触手より一回り太いそれは筒状となっているらしく、くちゅくちゅと唾液を捏ねるように蠢く。エリスは生理的な嫌悪を覚え、息を詰めた。


《中略》


突如、Gスポットを正確に穿つ。

「っ、――〰〰〰〰ッッ♡♡♡」

ルナが背を反らし、声にならぬ悲鳴を上げた。

「オ゙ッ‼♡ オ゙ォ゙――〰〰〰〰⁉♡♡」

遅れて、詰めた息が熱い雄たけびのように吐き出され、快楽がルナの全身を電撃のように貫く。

どづんッ! どづんッ‼

「ォぎゅっ⁉ ほォ゙っ?♡ オ゙ッ?♡♡」

暴力的な快楽に、ルナの脳はそれを快楽だと認識することができない。反射的に天を仰ぎ、弓なりに反らした身体をガクガクと震わせているだけだった。

そうして無抵抗に悦楽に晒されている間にも、触手は止まることなく新たな快楽をルナに注ぎ続ける。

どづッ! どづッ! どづんッ!

「おっ? オ゙ッ?♡ おごォっ⁉♡♡」

細い触手たちがルナの足を折りたたみ、M字に開脚して固定する。より一層犯しやすくなった泥濘を、遠慮なく触手が行き来する。

「オ゙ッ♡ ほォ゙ッ♡ やッめ゙え゙ッ♡ や゙め゙えぇ゙ッ♡」

ようやくルナの本能は、降りかかっている異常が触手によるものだと認識した。

「おかしくゥっ♡ おかしくに゙ゃってりゅッ♡ かりゃだッ♡ おきゃしきゅッ♡♡ ア゙ッ♡ 〰〰〰〰ッ♡♡」

だが、認識した所で成すすべはなく、ルナに出来るのは現状を縺れた舌で訴えるのみである。

「はぁっ、あっ、ルナ、るなぁ……ッ」

くちゃっ、ぐちゅんっ……

腰を揺らすエリスの割れ目からも、淫靡な水音が弾ける。

「可愛い、ルナ、んっ、かわい……ッ」

虚空を見詰めるルナの瞳には、自慰に耽るエリスの姿は映らない。

「ヒんっ⁉」

ルナの尾に絡み付いていた触手が、役目を思い出したかのようにぬるりと動き始めた。尾の付け根から先端を、まるで男根を扱くように繰り返し擦り上げる。

「しっぽォッ♡ ちっぽにゃめてぇッ♡ あっ、あっ♡♡ ちっぽあちゅぃッ♡♡ ちっぴょッ♡♡」

 尾を愛撫する触手に張り合うように、Gスポットを穿つ触手も激しさを増した。

「どっちもッ♡ どっぢもはァッ♡ だめぇえっっ♡♡」

細い触手の先端が、時折子宮口を掠める。敏感な部分への微かな刺激は、痛みではなく更なる官能の予兆となってルナの身体を痺れさせる。

(おりてきてるッ♡ 子宮、おりちゃってるぅっ♡)

段々と掠める頻度が増えるごとに、ルナの焦燥も募っていった。

「奥ッ♡ 撫でにゃィれっ♡♡ 撫でにゃ、ぁアぁあア〰〰〰〰ッ♡♡」

ビグンッ‼

子宮口を舐めるように抉った触手に、ルナの身体が一際大きく跳ね、またも果ててしまう。

その拍子にルナは我を忘れ、エリスの腰を掴む指先には白むほどの力が込められた。

「あっ、あっ、――んゥううっ♡♡」

だが、昂った身体はその痛みを快楽へと変換し、エリスは今日初めての絶頂を迎える。

「ふ、ぁ……はぁ、はっ……」

「キてりゅッッ♡ も゙っっ♡ キてり゙ゅっ♡ ア゙っ♡ アァッ、あぁァ゙〰〰〰〰ッ♡♡」

くったりと力を失ったエリスの下で、ルナは尚も絶頂に苛まれていた。触手の責め苦が続いているのだ。

目的地を見つけた触手は、最後の仕上げと言わんばかりにGスポットを叩き、ルナの愛液を撒き散らす。

「壊れ゙ちゃゔきゃりゃッ♡ ほォ、んとッに゙ッッ♡♡ 壊゙れ゙――」

どっづんッッ‼

「〰〰〰ッ♡ ォ゙ッ――〰〰〰〰ッッッ♡♡♡」

ビクビクビクッ‼

触手のとどめの一撃に、ルナの身体が激しく跳ね回る。

舌をだらしなく投げ出し、瞳はほとんど瞼の裏に隠れる。

普段は凛々しい相貌も、涙と汗と唾液に濡れ、見る影もない。輝く尾も、今は粘液に濡れて細く力なく垂れていた。

その、どこまでも無様なルナの痴態が、エリスの視線を釘付けにする。エリスは絶頂に達したとき以上の拍動と熱を覚え、荒く浅い呼吸を繰り返した。


《後略》

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