第2話 合コンにて


「なんであなたがここにいるの?」


 そういいながらこっちを見る愛乃。


「いや俺は連れてこられただけで、どうゆうことだよ太陽」

「いや~別に言ってもよかったんだけど、こっちのほうがサプライズみたいでいいじゃん!」


 まぁ別に愛乃がいること自体は構わない。でもこいつがいると男子は全員愛乃へ興味を向ける。

 女子のほうはそれでもいいのだろうか。


「とりあえず全員そろったしはじめ~!」


 陽キャ女子が自己紹介を始める。


「あたしは神崎千代!よろしくね~!」


 彼女が話始めるとみんな各々に耳を向ける。

 全員で俺含め8人か、自己紹介は神崎から順に時計回り。


 つまり神崎と対面に座っている俺は最後ということだ。


 女子が一通り自己紹介を終え最後は愛乃でもちろん男子からの質問がすごっかったが、愛乃はそれを軽く流していた。


 そして男子の初めは太陽だ。


「上野太陽です!よろしく!」


 高身長な上に顔も整ってる太陽、女子にはモテる。

(引き立て役だなぁこれは)

 

太陽に悪気があるわけではないのはわかっているが太陽がモテるのだから仕方ない。

 男子も次々と終わり自分の番。


「佐田涼です」


 特にいうこともないので名前だけ言って終わらせた。そして次は席替えだ。

各自気になる人のところに行くのでもいいがそれだと愛乃と太陽に集まるのが落ちだろう。


 「トランプ持ってるし同じ番号の人が隣ってことでいい?」


 (なんでそんなもん持ってんだよ太陽は。)

 ハートとスペードの一から四、男子はスペードだ。


 これも順に引いたから俺のは最後の一枚、残り物には何とやらとか言うしまあいいだろう。


 「……三か、よりによって三か」


 思わず少し声と表情にでてしまっていたようだ。


「なに~?さだっちあたしが隣なのいや?」

「さだっちって、まあいいや、別にいやってわけじゃないよ」

「ふ~ん、それならいいや~それよりさ!」


 神崎が何かを言おうとしたタイミングで太陽が席替えを促す。

(隣に来てしまった…どうしようか)

 隣に来た以上話をしなければならない。


「さだっちってさ!あいちんの幼馴染なんでしょ⁈」


 あいちん…愛乃のことだろう。


「まあそうだが」


 答えると神崎は嬉しそうに質問をしてくる。

 愛乃の好きなもの、苦手なこと、小さいころどんなだった、休日何してる…


「いや、本人に聞けよ!」


 こいつ愛乃のことすきすぎるだろ。


 ついで程度に俺のことも聞いてくるがそっちにだけ答え、愛乃への質問は本人に聞けの一転張りで押し切った。


 気のせいだろうけどちょくちょく愛乃からの視線を感じる。

 愛乃のほうを見ると案の定こっちも質問攻めだ。運よく隣に座った男子はチャンスを逃さぬよう必死なようだ。


 太陽のほうも同様だ。


「同じ質問攻めでもなぜここまでちがうのだろうか…」

「なになに~?あいちんと話せなくてそんなに悲しいの~?」


 少し腹が立った。


「いや、世界が違いすぎて悲しいとかはないよ」


 本当だ、昔は俺にも望みがあるとか思ってたからほかの男と同じような感じだったと思う。


 「比べることすら失礼だからな」

「さだっちってそんなこと言うんだ」

「いやまあ事実だし」


 実際近くにいれば痛いほどわかる、ただ昔から一緒にいるってだけ。


 それだけなんだよな。


 「さだっちもいいとこあると思うけどな~」

「はは、ありがとうな」

「本当だってば~!」


 それからは他愛のない話をして解散することになった。


 太陽と愛乃は用事があると言い二人で先に帰ったらしい。

 二人が先に帰ったから一緒に帰るような人はいない、寄り道する気力もないしそのまま帰ろう。

 結局合コンも太陽と愛乃の独壇場だった、まあ女子と話せたってだけで十分かもしれない。

 

 ◇◇◇


 今日は金曜日だ、金曜日は少しだけ朝から気分が軽くなるのは自分だけだろうか。

 眠い目をこすり、朝の支度なんかを済ませ外に出る。


神崎さんと話してから愛乃のことを少し考える時間が多くなった気がする。


 幼馴染ってだけで不自由なく愛乃と話せているのはすごいことなのかもしれない。


 「幼馴染、か」


 ラブコメなら物語の主人公は俺なはずだ、でも実際のところは太陽。


 俺はモブよりは少し上の友達ポジって感じだろう。幼馴染なのにね。


 太陽の周りには愛乃と同じようにたくさんの人が集まる。嘘が下手で正義感のあるまさに主人公と呼べる人間だ。


 周りに恵まれてんだろな俺は。


 考え事をしていると愛乃の姿を見つけた、隣には太陽。

 正直言ってすごくお似合いだ。俺なんかが入る余地なんてないほどに。

 あの二人が一緒にいると周りも下手には近づけないのか挨拶だけしている。それほどまでにお似合いな二人。

 

本当は俺だって愛乃とは話したい、でも二人の恋路の邪魔をしようものなら外野に〆られてしまうだろう。

 それだけは避けないといけない。


愛乃とは高校に入ってから少しずつ距離ができ始めた、でも今更無理に関わるつもりもない。

 それは愛乃に限らず太陽なんかもだ。高校入学で変わるとは思っていたが、実際そうなると来るものがある。


 少し歩幅を縮め、速度を落とす。


 二人の邪魔をしたくないのは前提だが、楽しそうに話す二人を見ているとなぜか胸が痛む。


(これからはもう少し早く家をでようかな)


 そう考えてると気づけば学校だった。

 

 

 

 

 

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