都会って怖いな。
@wzlwhjix444
第1話 街頭インタビュー
某テレビ局の下請け制作会社の平根ディレクターとカメラマンの石出は
ある番組の取材で、眠らない街新宿に来ていた。
番組で使用する(こんな人いました)素材集めに、道行く人に
インタビューをすることが、今回の仕事だ。
そのテーマは、最近むかついた出来事教えてくださいというお題だ。
インタビューを始めてすぐ、さえない格好をした三十路の男が平根Ⅾの目に留まった。
垢ぬけない風貌はどっから見ても田舎から出てきたばかりで、
彼ならおそらくムカつくことがいっぱいあるだろうと考え、すぐさま
呼び止めることにした。
「あの~、ちょっとインタビューしてもよろしいですか?」
平根Dが声をかけると、三十路男は立ち止った。
「○○という番組で、今、道行く人にお話を伺ってるんですが、お時間大丈夫ですか?」
振り返った三十路男は突然満面の笑みで、
「あー、俺、その番組毎週見てますよ! マジですか?やばいやばい、
やっぱ都会ってスゲーっね。ははははは」
と驚くぐらいハイテンションだ。
「今日はどうゆう用でこちらに?」
平根Dが尋ねる。
「俺っすか? いや~、一週間前に職探しに田舎から出てきたんですけど、
どこも不採用で参ってます。うははは」
とても参ってるように見えない明るい三十路男に、平根Dは、この人にムカつくエピソードは期待できないなと思いながら、
「最近ムカついたエピソードを聞いてるんですが、何か腹が立つこととかありましたか?」
「ムカついた話ですか? うはははは。いっぱいありますよ。さっきも呼び込みのお兄さんに三千円で飲み放題だっうキャバクラ行ったら、ビール一本と乾きもの一皿で四十分二十五万円ぼったくられちゃって、うははは 都会って怖いですね」
「本当ですか? それってそんな笑って話せます?」
平根Dが心配そうに声をかけると、
「起っちゃったことは仕方ないすっよ。はははは」
と終始ハイテンションの三十路男に、これの素材は使えるなとほくそ笑んだ。
それから一時間後。
局のプロデューサーから、平根Dのスマホに連絡がきた。
「平根ちゃん、今新宿で素材集めだよね?」
電話を受けた平根Dは
「ええ、そうですが……」
「悪いんだけど、今緊急の案件でちゃって、そっち優先で取材してくれるかな」
「どうしたんですか?」
「平根ちゃんのいる近くのキャバクラで、店員数名が刺されたらしくて、安否の確認とかキャストでもなんでもいいからコメントとってきてよ」
「マジですか? わかりました。すぐ向かいます」
と平根Dは現場に向かいながら、
「やっぱ、都会って怖いよな、うはははは」とカメラマン石出の肩をハイテンション叩いた。
都会って怖いな。 @wzlwhjix444
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