女神を超える
「〜〜♪」
脅威の排除を完了した私は、上機嫌のまま大聖堂で鼻歌を歌いながらスキップしていた。
ひと仕事終えた後は気分がいいな!
龍の解剖も順調で未知のエネルギーもかなり分かってきた。
あれは魔力をこの世の物ではない力……感情や意識といった物質ではなく概念的なエネルギーに変換し、それをビームにして撃っていた。
初見では分からないな。私はこの世にあるエネルギーなら大体分かるが、次元が違うエネルギーはまだまだ分からないものばかりだ。
それらを踏まえた上で言うが、女神に対してこのビームの効果は薄いと思う。
確かに火力はあるが、エネルギー源がそもそも女神が作ってるものなんだからな。
供給を止められたら撃てなくなる。
だが、撃たれた場合のカウンターはしっかりと考えたし実行も出来た。
さて……そろそろ決戦の準備といこうか。
◆
「私はこれから女神を倒してくる」
ルクス聖王国にある家でパルヴァーデにそう伝えた。
「唐突……でもないか。分かった」
「あ、もちろん私を半分この星に残すから死ぬことは無いぞ」
「そうなのか! よかった……!」
バックアップみたいなものだな。死なない努力と力への欲、両立するのは難しいができないことは無い。
龍と戦った時の装備に加えて、対女神用に準備した切り札となるレーザーブレードを手に持つ。
「……よし」
負けるつもりは無い。
無いが、城にいる私でルクス聖王国にいる国民の約半分に分散して乗っ取る。
ルクス聖王国内で発生した無数の青いガラスの蝶が、ニンゲンに触れた瞬間に溶けるように消えていった。
行くか。
「行ってくる。すぐ戻ってくるがな」
「分かった、行ってらっしゃい」
ワープゲートで一度海の上へ移動する。
─ザザァァ……!!
浮遊したまま波の音に耳を傾ける。
……気分が落ち着く。
私の生まれは海なのかもしれないな。
青いガラスの触手を伸ばして魚を捕る。
「がァぶ」
うん、美味いな! やはり魚は良い……!
─バリ……バリ……!
骨まで完食した私はレーザーブレードを起動する。
紫色に光る刀身が周囲の空間を歪ませる。
先手必勝……!
ワープゲートを女神がいる空間……いや、女神の背後に繋げ僅かに開いた隙間にブレードを突き刺す。
『■■■■■■■■!!!!』
「よっ、初めましてだなァ!!」
ワープゲートが広がり、私はそのまま女神がいる空間に侵入した。
上下左右が分からなくなるような真っ白の空間。よく言えば神々しい、悪く言えば目が痛い。宇宙の闇が恋しくなるな。
空間自体に毒や害になるものは……私にとっては無いな。
女神は少しニンゲンに近い形をしているが、顔の無い頭部と白い肌に無数の翼と触手が生えている。どうなってんだコレ? 初めて見る生物だが、なんというか寄生されたマネキンみたいだな。
背中に突き刺したレーザーブレードを上に振り上げる。背中、首、頭を裂くように断ち切った。
『■■■■!』
悲鳴らしきものと共に衝撃波が発生し、その場から吹き飛ばされた。
っと……まぁ死なないよな。
『▲▲……!?』
裂けた部分が元に戻っていく。
再生能力……わざわざ再生する必要があるってことか。血は流れてないが、私と似たような感じか?
私は背中からタコの触手を3対生やし、先端に金属を生成して剣のように振るう。
─!!!
『▼■○●●』
空間転移で女神はそれを躱した。
躱された! というか、音速の壁を超えても音がしない……!
後ろから撃たれた広範囲の電撃に対してレーザーブレードを向け、電子を吸収して無効化する。
(そんなもの効かない、って……ああ、そういう)
空気がないのか。喋れない。
『●○●●■』
……コイツ喋ってるな。まぁ喰えば原理は分かる。
女神が放ったビームを躱して近づいたところで、レーザーブレードを使って首を刎ねる。
『■■!!』
(戦い慣れて無いなァ!)
触手の剣で頭を串刺しにし、そのまま頭を捕食する。
!?
取り込んだ瞬間、今まで喰らった生物とは比較にならない能力の情報が流れ込んできた。
それを一瞬で処理、2発目のビームに対して同じビームで対抗する。
「なるほどなァ……!」
「貴様ぁ!! それは私の力だ!」
女神が頭を再生させながら激昂する。
「それは違うな! 今私も使えるようになった力だ!」
『魂』と『意識』の集合が存在する領域、次元に接続する力……!
ニンゲンかどうかを識別したのはこれか……!
「アーッハッハッハッハ!! 楽しいなァ! もっっっっとこの力が知りたい! 喰わせろ!」
「ッ!! 厄災め……!」
「アハハハ!」
自らの魂から得たエネルギーをレーザーブレードに注ぎ、巨大な刀身にし横薙ぎに女神の胴体をぶった斬る。
そして縦斬り。4分の1。
「ぐおぉぉあ!?」
女神の姿が消える。
「見えているさ!」
体の向きを変えて転移先に袈裟斬り、逆袈裟斬り。8分の1。
「───!!」
「おっと、魂にクリーンヒットかァ!?」
細かくなった体を触手で突き刺し即座に取り込む。
「アーッハハハハ!! 女神も所詮は生物か!」
「……ならば、逆に貴様を乗っ取ってやる!」
頭だけを再生させた女神が吠える。
「へぇ」
体内に最強の毒を回す。
「……ッ!? こ、こががぁぁあああ!!??」
「アーッハハハハ! お前なんで痛覚繋ぎっぱなしなんだ!?」
「溶ける!? この私が溶けてなくなる! 貴様─」
─パン!!
頭を両手で掴んで圧縮する。
「が、ぁ、ぐ、が……!!!?」
「がァぶ」
─ゴリッ!!
アーッハッハッハッハ!! 最高の気分だ!
美味いな!
─バリバリィ!
…………あー、でも。
魚の方が美味いかな。
◆
─ビー!!
!
……誰だ?
お母さんがいない中、家の敷地内に侵入者がいることを知らせる警報が鳴り響く。
モニタで映し出された侵入者を見る。
この女は……多分、荒野の。
家に持って帰ってきた自動販売機で、大きめのスタンバトンを買う。
─ピッ ガコン……
拾い手に持ちスイッチを入れ、軽く振る。
─バチバチッ!
よし。
上着を脱ぎ、動きやすい格好で窓を通り庭に出た。
「不法侵入だぞ」
「!? き、君は……!」
「私はパルヴァーデ。あなたは?」
「……私はヴァーデレ。君のお母さんに話があって……ここまで来たの」
「話? どんな?」
コイツはこの前お母さんと戦った……と、思う。見てないけど話には聞いたし。
内容次第では今ここで。
「…………私、は……復讐するべきなのか、分からなくなって」
……?
「じゃあなんで来たんだ?」
「顔を見れば自分の気持ちが分かるかな、って……」
……???
なんというか、行動力はあるんだな。
「でも迷ってる時点で復讐心はそこまでなんじゃないか? 最後くらい楽しんだらどうだ?」
「え……?」
「お母さんが女神に勝ったらこの星の大半は無くなる。もちろん、住む生物の命は……あんまり残らないだろうな」
「…………そっか」
ヴァーデレは難しい顔から、何か吹っ切れたのか笑顔を浮かべた。
「復讐なんてしなくていいや。さようなら」
「ああ、さようなら」
◇
ワープゲートを抜けた先にはビルがあった。
「お母さん、ここは?」
「んー……英語、多分アメリカに近い国だろう」
「アメリカ……」
「ま、不安になるのも分かる。だが私たちなら何も心配いらないさ」
「……そうだよね! よっし、なんか美味しい物を食べに行かないか!?」
「まずはお金だな」
この星には何があるかな?
【好奇心が止まらない〜完〜】
好奇心が止まらない 牙野 木奥 @ffd700
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