第2話 僕の思(想)い出から生まれた存在
「あなたは、誰、ですか?」
開口一番、僕は突然現れたその男の人に尋ねる。てゆうかその質問はここにいる人達全員に当てはまるのだが、
「あ!セイジ!ちょっと聞いてよ!リリーがさぁ」
一人の女の子がそんな声をあげる。けれど、その男の人はその声を無視して僕の方へと歩いてくる。
そして、僕の前まできてその手を僕に伸ばす。僕はすこし怖くなり思わず目を瞑った。
だけど、その手は気づけば僕の頭へと優しく添えられていて、男の人はこう告げる。
「おはよう」
優しい声音で微笑みながらそんなことを言ってきた。まるで、光姉さんに言われているかと思った。
その瞬間、目から涙が出てくる。
しばらくして、落ちついた僕は知らない人達三人に向き直る。
「はーちゃん大丈夫?ごめんね?セイジがいきなり…」
「セイジずるいずるい!ミキもはーくん撫で撫でしたい!」
「おいミキ、ちょっと黙れ」
そんな事を言ってる三人に僕はずっと気になっていた事を聞く。
「あなたたちは、誰、なんですか?」
僕がそう聞くと、三人少し黙る。
「あなたたちは、なんで僕のことを知っているんですか?僕はあなたたちの事を知らない、会ったこともない、教えてください。」
僕がそう言ったあと、その空間には少しの間静寂があった。だけど、しばらくして一人の女の子が優しく答える。
「知っていて当たり前だよ。なんせ私たちは、はーちゃんとずーっと一緒だったんだから」
その言葉に僕は困惑して思わず聞きかえす。
「え…?一緒にいた?でも、僕はあなたたちのことは…」
僕がそう言っているともう一人の女の子が間に入って優しく語る。
「はーくんがずっと大事にしていた物、そして、光姉さんとの思い出が詰まっている物、『ボール』『鉛筆』『三輪車』。ミキたちはその無機物から生まれた存在なんだよ。」
その女の子の言葉に僕は、ただただ混乱する。理解、できるわけがなかった。すると、最後にそれまで黙っていた男の人が語る。
「はく、お前は昨日、寝る直前、強く想ったよな。『一人は嫌だ』と、」
「え?そうなの?全然覚えて、ない…」
「まぁ、実際お前はそう想っていたんだ。そこで、お前の強い想いと共にお前の"能力"が発動した。」
「僕の、"能力"が…」
僕の能力。それは…、
『想いを具現化させる能力』
そう、僕の能力はそういう能力なのだ。僕が想えばそれが実際に具現化する。
例えば、"ゲームがほしい"と強く想えばその想いが具現化し、手元にゲーム機が現れる。
一見聞くとかなり強く、使い勝手の良い能力だが、こういった優秀な能力には必ずしも弱点が存在する。
この能力、1回発動させただけで、体力がゴッソリ持っていかれるのだ。それこそ、10キロの道を全力疾走した時ほどだ。
故に、1回でそんな大きい代償がある能力を続けて発動させたら、命の危険性もあった。
だから僕は、これまてこの能力をあまり使ってこなかった。
「だが、お前の想いがいくら強かろうと限界はある。」
男の人が言う。
「お前が能力を発動させただけじゃ無機物から命を生み出すなんて所業、そう簡単にできない。」
「じゃあ、どういうことなの?」
「簡単なことだよ。はーくん」
そんな声が聞こえた。片方の女の子が説明し始める。
「もともと無機物だったミキたちにはーくんと光姉ちゃんの思い出が残っていたんだ。」
「普通無機物に記憶とかそんなものが宿ったりしない。でも、私たち無機物をはーちゃんたちは大切に扱ってくれた。その結果だよ。」
2人の女の子達が優しく語る。まるで命よりも大切なものを語るかのように。
「はーくん、覚えてる?光姉ちゃんとよく一つのボールで遊んでたよね。」
「う、うん…」
「ミキはもともとそのボールだったんだ。ミキ楽しかったよ。はーくんたちと遊べて。その時の思い出が今のミキを形作ったの」
この女の子があのボール…。そう思うと感慨深いものがあった。
「私は鉛筆から生まれた存在。はーちゃんいつも光姉さんからもらったあの鉛筆本当に大切そうに使ってたよね。」
「うん…。だって光姉さんが僕のために作ってくれたものだから。」
「ふふ、はーちゃんは優しいね。私は光姉さんがはーちゃんを想って作った気持ちと、はーちゃんが大切にしてくれる気持ちが今の私を形作った。」
この女の子はあの鉛筆から生まれた存在。そう思うとすごく胸が温かくなる気がした。
「そして、」
最後に男の人が喋り始める。
「俺は光姉さんがはくのために買ってくれた三輪車から生まれた。はく、お前が三輪車に苦戦してる時、よく光姉さんが後ろから押してくれたよな。」
「うん。なかなかうまくいかない時、いつも押してくれた。」
「光姉さんはその時いつも想っていたんだ。お前を心の底から大切にな。その時の気持ちが今の俺を形作っている。」
「そう、なんだ。」
僕は今の三人の話を聞いていろんな感情が渦巻いており、どう反応すればいいかわからなかった。
ただ、一つ言うなら、光姉さんはいつも、いつも、いつも僕のことを心の底から大切に想ってくれていたってこと。
そう考えるだけで、胸が温かくなる。
「光姉さんのはくを想う強い気持ちと、思い出は無機物だった俺達に伝播するほどだった。」
セイジと呼ばれていた男の人が語る。
「そして、昨日はくの強い強い想いが能力によって発動してその強い想いと無機物だった俺達にあった光姉さんの想いが共鳴して命を形作った。そして俺達は人間として生まれたんだ。」
「奇跡だよね。でもミキはこうしてはーくんと一緒に居られるだけでなんでもいい!」
「それに、光姉さんのはーちゃんに対する想いは私たちにも強く刻まれてる。だからかな、ここまではーちゃんのことを守りたい気持ちが溢れるのは…。」
今の三人の話で一気にいろいろな情報が流れてきて頭はパンクしそうだった。
ただ、光姉さんの僕に対する想いは無機物だったこの人たちに伝わるほど強かった。
だからだろうか、この三人が光姉さんに少し似ている気がしたのは。
「そういえば、」
僕は思い出したように呟く。考えてみればなぜ今まで知らなかったんだろう。
「三人の名前は?」
僕がそう問うと、三人はポカーンとして、笑
一人の女の子が笑い出す。
「あははは!ここまで説明してなんで名前がまだだったんだろうね。ミキの名前はミキっていうんだ。よろしくねはーくん!」
「う、うんよろしくミキ」
僕がそう言うと次にもう一人の女の子が自己紹介を始める。
「私の名前はリリアって言うよ。これからはーちゃんのことはリリーお姉ちゃんが守るから安心して」
リリアがそう言うと反発する大きな声があった。
「ちょっとリリー!なんでそうなるの?!はーくんの面倒はミキが見る!」
「ミキじゃ不安だよ。もしはーちゃんに何かあったらどうするの?」
「ミキがいるから大丈夫だもん!はーくんを危険な目には絶対合わせない!」
そんな感じでまたしてもいい合うミキとリリア。男の人はその光景をやれやれといった感じで見ていた。
「それじゃあ最後は俺だな」
そう言って言い合う二人をよそに、男の人は僕に向き直る。
「さっきから何度かそこのバカ達が呼んでたが、俺の名はセイジだ。よろしくな」
そう言ってセイジは微笑みながら僕の頭を優しく撫でる。この人に撫でられると不思議と落ちつく。
僕は満更でもなさそうにそれを受け入れていた。
そうして始まる。
僕と無機物から生まれた新しい家族との生活。
ただ、僕はひたすらに間近にある人の存在に安心していたのだった。
ちっす!作者の「前」です。
無機物の心第二話を本日投稿いたしました。
あまり言うことが思い浮かばないので次回第三話の投稿日をお伝えします!
次回は"10月4日"に投稿いたします。
無機物の心 前 @hika3
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