乾かない言葉
放課後。
好きです。
忘れないように
言葉に頼る。
君は迷惑なんだろう。
眉間に寄せた皺
優しく微笑む君。
なんでかな。
そんな顔、させたいわけじゃなかった。
好き、と言う覚悟はしていた。けど、
好きじゃない、を受け取る覚悟は
していなかった。
私は泣けばいいのかな。
笑えばいいのかな。
怒ればいいのかな。
冗談、と分かりきった嘘を吐けばいいのかな。
私の乾かない言葉は
君の心に張り付かずに
滴り落ちる。
はぁ、今日はずいぶんと一秒が長い。
風が強く吹くたびに
飛び飛びに時間が進んでいるような気がする。
火照った身体に冷たい風が気持ちいい。
君は、気持ちは嬉しい。でも、と。
断りのテンプレートを口にした。
その言葉はベッタリと私の心に張り付いた。
私の横を通り過ぎる君のことを見送りはせずに
顔を下に向ける。
最後までどういう表情を
君に見せればいいのか分からなかった。
なんで私じゃダメなんだろう。
もうちょっと女の子女の子してたら良かったのかな。
君が見つめる先はいつも決まって
私の隣りだったもんね。
あの子みたいに可愛くて
あの子みたいに清楚で
あの子みたいに
あざとすぎる隙を見せれば良かったのかな。
あの子は面食いだよ。
君じゃ付き合えないよ。
二番目でもいいから、私で我慢してよ。
付き合ってみたら、私を好きになるかもよ。
その純粋すぎる歪な思いは冷たさを残して
心にとどまる。
いっときは笑顔を作れそうにない。
私は今も
好きを肯定するだけの言い訳を探していた。
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