もみじの音
ガサッと足音を残しながら、その場でスキップ。
軽やかに跳ねた足取りは、ほんの少し浮いているみたいで。季節が変わる気配を、足の裏で確かめるみたいに。
目の前の景色は
赤と黄色のグラデーションが、静かに世界を包んでいる。にぎやかさよりも、少し寂しさがあって、その寂しさが私には心地よかった。
雲の
今の私は、
自分でそう言葉にすると、なんだか少し笑ってしまう。だって、いつもはどんなに楽しいことがあろうと、人目があるこんな道でスキップするほどに
でもそうやって演じてみせる。
髪を少し揺らしてみたり、わざとスカートの裾をつまんでみたり。声のトーンだって、ほんの少し上げて。いくらか上品な仕草をしてみたり。
そうやって私は、私が思い描いた『少女』を自分の体に映してみせる。
理由はただひとつ。
君に、可愛いと思って欲しいから。
……後ろを振り返る。
君の姿が私の瞳に映った。手をポケットに突っ込み、気取ったふうに歩くその仕草が、どうしようもなくぎこちない。
君も君が思い描いている『誰か』を演じている。
だけど君は、きっと気付いていない。もっと私を見て、もっと好きになって。
私のこの気持ちは、
少しだけ、ほんの少しだけ、胸の奥が、ずんと痛んだ。
秋の空気が冷たさのせいにしてみても、その痛みは消えてくれない。
『ねえ、君。私の精一杯を見ないなんて、何事か』
口元で形を作るだけで、
黄色の
その瞬間に、私は君に、最高の笑顔をプレゼントする。
君の視線を奪った笑顔は、私の顔も熱くさせる。
たった一度の視線で。
たった一瞬の心の揺れで。
だからすぐに振り返る。君の視線から逃げて、私はまたスキップをする。ガサッと足音を残しながら。
私は、可憐な少女を演じ続けている。
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