目隠しの流星群




 流星群が願いを言うまで待ってくれない。


 夜空を切り裂く光は、ほんの一瞬で消えてしまう。目で追う間もなく、ただ残像だけを瞼に焼きつけていく。


 だから私は、必死で口を動かした。言葉を、声を、想いを……すべて乗せようと。


 だけど、音はどこにも乗ってくれない。

 舌は噛むし、唇は焦りに震え、息ばかりが熱くこぼれてしまう。

 ……どうしてもまとまった言葉にならない。


 どうせなら雨降りの雲に、夜空を隠してもらおうか。見えないほうが、心が楽だ。

 そうしたら雲の向こうで休憩している星たちに、こっそり願いを届けられるのに。


 どの星でもいい、私のお願いを聞いてください。一番ノロマな星に託します。


 願いを言葉に乗せるたび、

 胸の奥で、確かな重みが生まれる。

 まるで、一文字ごとに魂を削っているみたいに。


 熱く、熱く、熱い想いは、どうしようもなく苦しい。



 ……分かっていた。

 君の心が、私に向いていないことなんて。

 視線の先が、私じゃないことも。

 笑顔の理由が、私じゃないことも。


 でも、いつもの君の優しさに触れていると心が苦しい。

 私は、君を諦めきれない。どうせなら嫌いになりたい。


 星が流れるたびに、私の胸の奥がトキメク。君の隣に立って、軽口を交わして、そして君と触れ合いたい。

 そんな誰にも言えない恥ずかしい欲を、幼い頃みたいに熱心に願ってしまう。


 どうして、こんなにも君でなくちゃ駄目なんだろう。

 そんなのに答えなんて出ない。

 出ないからこそ……私は今、情けなくも願っている。



 優しくて、頼りがいがあって、私の背中を押してくれて、どんな些細なことにも気付いてくれる。君は、そんな人。


 流星群は、容赦なく夜空を走りさる。

 私の想いになんて振り返りもしないで。

 それでも私は、また次の光を探してしまう。


 ……だってまだ私は、納得できてないらしいから。


 再度、願い事を口にした。


「君を嫌いになりたい」


 ……でも私の願いは、今もまだ叶っていない。





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