第4話 初めてのお出かけ

 翌日、日曜日の午後、勇太は自宅を出発した。思わず笑みがこぼれる。


 家族には「友達と遊びに行ってくる」とだけ伝えている。


 母親は、受験生なのにと文句を言ったが、昨晩2日分の勉強をした成果を見せると、それ以上何も言わなかった。寝る前に、死に物狂いで勉強しておいて良かった。


 どのような服を着て行こうか迷ったが、結局いつものTシャツとジーンズ、ショルダーバッグにした。正直なところ、大した服や鞄は持っていなかったので、それぞれ一番新しいものにした。


 勇太は、待ち合わせ時間よりかなり早めに着いてしまった。約束した待ち合わせ場所で、そわそわしながら待っていると、エマがやってきた。


 エマは、落ち着いた花柄のワンピースにハンドバッグを持っている。綺麗だ。


 勇太が思わず見とれていると、エマが笑顔で話しかける。


「ごめん、待った?」


「ううん、今来たばっかりだよ」


 勇太は笑顔で答えた。これから2人で遊びに行けるなんて、夢を見ているみたいだ。


 2人は繁華街の映画館に向かった。


 2人が観た映画は、異星人の侵略に立ち向かう人類の話で、アクションあり家族愛ありラブロマンスありと、てんこ盛りの内容で、なかなか面白かった。


 映画を観た2人は、映画館近くのカフェに入った。勇太が抹茶ラテを頼むと、エマも同じものにした。


「これ、美味しいね。初めて飲んだかも」


 テーブルの向かいに座るエマが、嬉しそうに言った。


「そうなんだ。いつもはコーヒーとかなの?」


「ううん、そういう訳じゃないんだけど……」


 エマが言葉を濁した。普段はあまりカフェなどには来ないのかもしれない。勇太は話を変えた。


「今日の映画、どうだった?」


「うん、面白かったわ! あれって実話を基にしてるの?」


「ははは、まさか」


 勇太は笑った。エマは冗談が好きみたいだ。


「やっぱりそうよね。あんな風にいきなり侵略するわけないもんね」


 そう言ってエマも笑った。勇太が笑いながら言う。


「確かに、今日の映画だと冒頭からいきなり異星人が地球侵略を開始してたもんね。実際はもう少し慎重に進めるはずだよね」


「そうね。相手の文明レベルや、こちらの目的次第だとは思うけど、少なくとも熱核兵器を保有するレベルなら、まずはそれを無力化してから対処するでしょうね」


 そう言ってエマは抹茶ラテを飲んだ。勇太が驚いた顔で聞く。


香月こうづきさんは、SF小説とか好きなの?」


「え? あ、わ、私というより、父親がよくそういう話をしてるの」


 少し焦った様子で、エマが恥ずかしそうに答えた。その姿も愛らしい。勇太はついついエマの顔を見つめてしまった。


「ご、ごめんなさい。変な話をしちゃって」


「あ、いや、そんなことないよ。僕は宇宙とかSF小説とかが好きだし、聞いてて面白かったよ」


 慌てて勇太がフォローした。エマが目を輝かせて勇太に聞く。


「星野君は、宇宙の話が好きなの?」


「う、うん。星とか宇宙が好きなんだ」


「そうなんだ!」


 それから2人は、星座や宇宙の話で盛り上がった。エマの宇宙に関する知識は、勇太が驚くほどだった。2人は時間を忘れ夢中になってお喋りした。

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