秋殼む

はらりはらり融け出した珊瑚は


ひらりひらり爪先の温度で


とろりとろり微睡む回路と


たらりたらりとそらになる



ざる朱色は手のひらを彩り

やがて幽霊の色になる


透明なぼくは透明なので

触れてすらもらえない いたみが



ゆるるる と鳴く塩辛蜻蛉しおからとんぼ

ごめんなさいを 呟く秋桜こすもす

しあわせ を再生するせみ

たちまちきえた 夕暮れと橙



いなくなりたい、どこかへ


いなくなりたい、あのこのもとへ


翅鞘ししょうは二度とも生えてはくれない、


虫にさえお断りされるガラス。

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