第25話 最後の魔王討伐

「マジかよ……」


 二体の魔王が固まっている場所の上空へ転移したのだが、魔王の周りはたくさんの魔物で埋め尽くされていた。

 そこから次々アーマンド王国へと向かって進撃しているのか、魔物の群れは一方向に向かって流れている。

 魔王が二体分のため、魔物が生み出される速さが今までの比じゃない。予想はしていたがここまでとは思わなかった。

 これは一度魔王を分断しないとまずそうだ。


「作戦をちょっと変えるぞ。まず最初は今まで同様、結界で囲ったあと魔物を一掃する。その後、魔王の一体を結界で囲って分断。一体ずつ魔王を倒すが、先行はフェリクスだ」

「わかったよ。私に任せて」

「ああ、頼んだ。もし消滅できなくても俺がいるから思いっきりやってくれ」

「ありがとう、ソウタ」


 ダグラスの防御魔法強化と結界は俺が担当する。そうすればフェリクスは思いっきり力を発揮できるだろう。作戦が固まったところで、まずは今までの流れを復習するかのように、結界で範囲を囲ったら魔物の消滅。

 そして一体の魔王を小さな結界に閉じ込めると場は整った。


 すぐに下へと転移して、シャノンが勝手知ったるとばかりに生まれてくる魔物の討伐へ駆け出す。ダグラスは俺とフェリクスを守るように前に立った。

 俺はシャノンを援護するように生まれた魔物に攻撃魔法を当てていく。フェリクスとダグラスには近寄らせない。


 俺とシャノンが魔物を相手にしている内に、フェリクスは魔王の頭上に浄化魔法を具現化させた細い槍を展開させる。そしてそれを振り降ろし魔王を串刺しにした。

 それで魔王は地面に縫い付けられて身動きがとれない。しかも浄化魔法だからか、魔王から魔物が生み出される動きが止まる。それを横目で見たフェリクスは、浄化魔法でできた槍をもう一度展開する。だが大きさはさっきとは比べ物にならないくら大きなもの。俺が作ったものと同程度だろう。

 そこに強大な炎と雷魔法をぐるぐると巻き付けていく。なるほど。フェリクスは最初に作った浄化魔法の小さな槍を避雷針にするのと同時に、魔王を一度弱体化させたのか。

 浄化魔法で動きを封じられた魔王から魔物が生まれていないのがいい証拠だ。きっと今は再生能力に力を全振りしているんだろう。


「全員退避!」


 フェリクスの掛け声でシャノンがこちらへ戻り、ダグラスが防御魔法を思いっきり展開。俺はその防御魔法を最大限強化すると、その外側に結界を張り巡らせた。


「いけ! やってしまえ! フェリクス!」


 俺が声援を送ると魔王の上にフェリクスの極大魔法が振り下ろされる。またものすごい轟音と地響きが襲い掛かるが、ダグラスの防御魔法と俺の結界によって衝撃波からは守られる。

 だが結界にぴしりとヒビが入ってしまった。フェリクスの魔法は俺が極大魔法を使った時より威力が大きいようだ。

 慌てて結界を強化し、ダグラスの腰に抱きつき支えてやることしばらく。眩しい光と地響きが収まり目を開けると一体の魔王の姿はなくなっていた。


「フェリクス! やったな!」

「ああ……私が魔王を、倒せたのか……」


 最初の浄化の槍がいい仕事をしたようだ。あれによって魔王を少しでも弱体化できたことと、極大魔法が浄化の槍にぶつかったことで魔法の威力が底上げされたみたいだな。

 そのおかげで俺以上の威力を生み出し、魔王を倒すことができたらしい。やっぱりこいつは『勇者』だよ。

 

「さ、感動するのはもう少し待ってくれよ。もう一体魔王が残っているからな」


 魔王を小さな結界に閉じ込めていたが、さっきの極大魔法の衝撃波によって結界が消滅していた。

 そのせいで魔王も生まれていた魔物も遠くへと吹き飛ばされてしまったようで、俺たちは急いで魔王を追いかけて転移した。


 魔王はあっという間に再生していたようで、次々と新しく魔物を生み出している。俺はもう一度魔王を中心に結界で周りを囲うと、シャノンが素早い動きで魔物の討伐へと向かって行った。

 フェリクスも剣に魔法を纏わせると魔物を次々と斬り伏せている。だが剣に巻き付けた魔法の威力はいつもより弱い。極大魔法を使ったことで魔力の残りが少ないみたいだ。


 二人が頑張っている間に俺は魔王の頭上へ極大魔法を展開。三度目ともなれば慣れたもの。あっという間に魔法を展開すると、シャノンとフェリクスはすぐにダグラスの後ろへと退避した。


「これで終りだ、クソ魔王が! 喰らえ! 『終焉のレクイエム』!」


 また中二病全開で魔王に向かって極大魔法を撃ちこんだ。するとまた強い衝撃波と轟音が響き渡り、強い光が放たれる。

 再度ダグラスを支えるように腰に抱きつき、フェリクスもシャノンも一緒になってダグラスを支えた。強い地響きが襲い掛かるが四人でそれに耐えていると、やがて光も衝撃もすべてが収まる。

 そっと目を開けてみれば魔王の姿は欠片も残さず消えていた。


「よし! 魔王三体の殲滅完了だ!」


 やったー! と四人でハイタッチ。シャノンはそれじゃ気持ちが収まらなかったようで、まるで曲芸師のように見事なアクロバットで喜びを表現している。

 ダグラスはそれを見て「ははは!」と大笑いし、俺はフェリクスに強い力で抱きしめられた。


「ソウタっ……! 本当にありがとうっ……!」

「うん。フェリクスも本当によくやったよ。魔王の一体はフェリクスが倒したんだ。お前はやっぱりすげぇよ」


 俺がお手本を見せていたのもあっただろうが、フェリクスはそれに自分なりのアレンジを加えて魔法の威力を底上げした。あれは俺では思いつかなかったことだし、フェリクスの努力と機転の賜物だろう。


「ねぇソウタ。ご褒美貰ってもいい?」

「ん? ご褒美? いいぞ。俺ができることならなんでも叶えてやる!」

「言ったね? 『なんでも叶えてやる』って」

「へ? ……んんっ!?」


 フェリクスの目に、一瞬ギラリと怪しい光が灯ったなと思った次の瞬間、俺はフェリクスに思いっきり濃厚なちゅーをお見舞いされていた。

 後頭部と腰に大きな手がしっかりと回されて抑えられており、逃げ場が一つもない。身をよじることもできずされるがままになってしまった。


「うわぁ、熱いっすねぇ!」

「シャノン、目を瞑っていろ」


 横でシャノンとダグラスの驚きと呆れた声が聞こえるが、フェリクスはそんな声もものともせずキスを止めようとしない。

 さすがに人に見られるのは恥ずかしいと、フェリクスの背中をバシバシ叩くとやっとフェリクスが俺の口から離れていった。


「ば、馬鹿野郎! いきなり何しやがる!」

「だって何でもいいって言ったじゃないか」

「言ったけど、人前ですることじゃないだろうが!」

「人前じゃなかったらいいんだね? ふふふ」


 あれ、これちょっとヤバいかも……?

 ま、まぁ俺もフェリクスに好きだと言ったし、今は恋人同士……になったんだよな? そんなことより魔王を倒すことが先だったから色っぽいことは何もなかったけど。


 俺もフェリクスとイチャイチャするのは別にいい、というかしたいけど。

 今はとりあえずキャンプ地のみんなのことが心配だ。結界は破られているし魔物が襲い掛かっていてもおかしくない。

 ここの周辺にもまだ魔物はうようよといるし、早く向こうへ戻らないと。


「とにかく! 今はキャンプ地に戻らないとだろ! ほら! 行くぞ!」

「ソウタさん、めちゃくちゃ照れてんじゃないっすか」

「さすがの賢者様も、勇者様の前では形無しというわけか」

「無駄口をたたくな! 行くぞ!」


 シャノンとダグラスにからかわれて俺の顔はもう鏡を見なくてもわかるほど真っ赤になっていることだろう。顔が、体の全部が熱くなっている。

 これ以上あれこれ言われる前に俺たちはキャンプ地へ一気に転移した。

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