海鮮
//SE ほのかな魚の香りがする店内で、2つのグラスが軽くぶつかる音が響く
「乾杯!! ふふ、本当にまた会うことになっちゃったね。え、冗談だったのかって? そ、そんなことないよ。結構……楽しみにしてたんだから」
「やっぱりこういう静かな店が良いな。もちろんたくさんお客さんがいる店も良いんだよ、お祭りみたいな雰囲気を味わえて」
「でも私は……こうやって落ち着いてお酒と居酒屋飯を楽しめるのが好き。それに……静かな方が、あなたの声をしっかり聴きとれるでしょ?」
//SE リズムよく包丁の音を刻む板前が、ニヤニヤして2人のことを茶化す
「そ、そんなんじゃないですって、先日意気投合した一人飲み仲間で。え、しめサバサービス? やったあ!!」
「え……先日もそうだけど、サービスに弱い? しょ、しょうがないじゃない、お得なものは誰だって好きでしょ?」
「可愛い女の子は得? そ、そんなこと……私が可愛いだなんて」
(言った彼も恥ずかしくなってきたのか、しめサバを口にしビールで流し込んで感想を言う)
「そ、そうだよね、サバって安くて手ごろなイメージあるけど、光り物って何だかんだで外せない。アジも良いなあ」
「え、関アジ関サバっていうのがあるの? 大分県佐賀関で取れる高級魚?」
「身が引き締まって弾力があって旨味も凄くて、醤油を付けなくても美味しい? 一度食べたらやみつきになる? た、食べてみたい……」
(春華が可愛い顔に涎を垂らしていると、イカとタコの刺身が運ばれてきた)
「わあ、イカとタコだ!! やっぱりこのコリコリした食感は外せないよね」
「イカと言えば、北海道の函館の朝市で取れたてのイカが楽しめるサービスを体験したことがあってね。うん、身の透明さとコリコリした食感が段違い、私もびっくりしたよ」
「ふふ……何だかお互い貴重な体験をしたことがあるんだね、仲間仲間♪」
(春華の笑顔に彼が少し照れて、刺身のつまを一口食べた)
「お、分かってるねえ。うんうん、食べずに捨てちゃう人もいるけど私は全部食べる派かな」
「大根と大葉のさっぱりシャキシャキした食感はアクセントになるし、わかめも美味しい。彩りだけじゃなく、食べ物としても優秀だと思うんだ」
「わさびも重要、やっぱりあるとないとでは味わいが違うよ。派手じゃないかもだけど……こういう縁の下の力持ちあってこその美味しい食べ物だと思うな」
//SE 板前の人が軽く微笑みながら、貝と海老とアボガドが乗った皿をテーブルに優しく置いてくれた
「貝!! うん、貝もやっぱり食べないとね。イカとタコとはまた違ったコリコリ感がたまらないの。え、しじみやあさりの味噌汁は貝の身もすべて食べる派なの? うんうん、分かる分かる、食べきった感が良いよね」
「海老は茹でたり生だったり、甘えびもあるけど、あなたはどれが好き? どれも好きって、もう……私も同じだけどね、えへへ」
「アボガドって不思議だよね、果物なのにトロみたいな食感でわさび醤油つけて美味しくいただけるし。海鮮ともサラダとも合うし、素晴らしい!!」
(マグロとサーモンと白身が運ばれてくると、春華と彼の目が輝いた)
「うん、やっぱりこの迫力ある感じは欠かせないよね!! マグロの赤みのさっぱり感とトロのコク、やっぱり海鮮の王者って感じがするよ」
「サーモンも凄く美味しいし、愛されているよね。え、あなたはマグロよりサーモン派なんだ。ふふ、ここはちょっと意見対立かも♪」
「白身は味はどちらかというと淡白だけど、繊細な美味しさがあるよね。友達から聞いたんだけど、鯛で有名なのは愛媛県なんだって。松山鯛めしと宇和島鯛めしっていうのがあって、それぞれ釜飯風と刺身風でとても美味しいらしいよ」
(春華と彼はお酒を一口飲み、ふうと一息ついた)
「海鮮って……何だか良いよね。日本の良さだなあって、こういう繊細さは日本ならではだと思うよ」
「もちろん洋風の力強さも良いんだけどね、日本人として時々こういう和の良さを静かに味わいたくなるの」
「良いね……こういう空間と雰囲気って」
//SE 春華の趣ある穏やかな笑顔に彼も相槌を打ち、板前の人も加わった和やかな会話はその後も続いていったのだった
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