とある穴場の居酒屋での、ゆったり甘々ちょっと不器用に盛り上がる大学生の男女の話
ここグラ
焼き鳥
「や、やっぱりふと……ももは基本だよね、ギュッとした弾力と満足感があって」
「か、皮も忘れちゃいけないと思うんだ。ふわっとした柔らかさに魅力が詰まってて……触ると癖になるよね」
「ん……しり、も絶対に押さえておきたいよね。入れるとこう……幸せな気分になれるというか」
(顔を赤らめる彼女を、隣の席の彼が茶化す)
「な……何よ、焼き鳥でどの部位が好きかって聞かれたから、答えただけじゃない!!」
「むう……意地悪。だってももは王道で……太い方が食べ応えがあるじゃない。皮は柔らかさと油のハーモニーが詰まってるし、ぼんじりは口の中に入れるとトロッとした感じで幸せな気分になれるし」
「それをお酒と一緒に頂く……やっぱり最高!!」
//SE 静かな店内に焼き鳥が焼ける音が響く
「あ……ご、ごめんなさい、一人で盛り上がって。変……だよね」
(ハイボールを両手で持って肩を落とす彼女に、彼が優しく呟く)
「え……変じゃない? 美味しいお酒と美味しい食べ物にはしゃぐのは当然? あ……ありがとう。初めて会った私をその……気遣ってくれて」
「……改めてごめんね、たまたま隣の席になっただけなのに急に話しかけて。私、お酒は好きだけど大人数で騒ぐのが、その……苦手なの」
(彼はやげん軟骨をかじり、カシスオレンジを一口飲むと自分も同じだと告げた)
「え……そうなの? うん……だから家で一人飲みが多いんだけど、一方で居酒屋の雰囲気は好きだし、誰かと一緒に飲むのも嫌いじゃないの」
「だけどやっぱり大人数でわいわいするのは苦手で……だからこういう穴場的な静かな店で一人で飲むことが多くて、隣の人とゆっくり会話するのに憧れていたの」
「でも、私臆病で……なかなか話しかけられなくて。あなたは……何だか話しかけやすかったから。ごめんね、何だか面倒臭い女で……迷惑、だよね」
(俯いてわさび付きのささみをかじる彼女に、彼は笑顔でやはり自分も同じだと告げた)
「え……自分も基本は一人で、話しかけるのが苦手? 男なのにビールが苦手で、果実系のサワーばっかり飲んでるのが何だか恥ずかしい?」
「あはは……何それ、そんなの気にすることないし何も恥ずかしいことじゃないのに」
「何だか私達……似た者同士だね。敬語も無くなってるし……気が合うのかも。え、嬉し涙? ち、違うよ、わさびのせいだよ、わさびの」
//SE 焼き鳥を焼いている店員が、悪戯っ子めいた感じで青春だと2人を茶化す
「も、もう、そんなんじゃないです。え、おまけでねぎまサービス? やったあ!!」
「あ……ご、ごめんなさい。私、お酒が入るとちょっとテンション上がっちゃうみたいで。え……そういうのも可愛い? あ……ありがとう、そんなこと言われたの初めてで」
(ほんのり頬を桜色に褒める彼女に、彼は少し動揺した様子を見せる)
「え、どうしたの頬を赤らめて? もしかして……私に惚れちゃった? あはは、そんなわけないよね、お酒の飲みすぎだよね」
「私、大学生なの。え、あなたも大学生? じゃあ、予定合わせたりとかしやすそうだね」
「どうしてかって? その……また一緒に飲めたらなって思って」
(断られないかどこか不安そうな彼女に、彼は穏やかな笑みを浮かべてOKを出した)
「よ……良かったあ!! じゃあ、連絡先交換しよ」
「名前? 私は
「え……そんなことないって? そ……そっか。物好きなのかな、あなたは」
(春華はそう言いつつも、どこか嬉しそうな表情を浮かべる)
「それじゃ、思いっきりお酒と焼き鳥を楽しもうか!! 何が良いかなあ、砂肝のコリっとした感触を楽しむのも良いし、つくねはやっぱり外せないよね」
「え? 自分は塩派だって? うーん、私はタレ派かなあ、素材の味を純粋に味わうのも良いけど、やっぱり食べ応えがある方が好き!!」
「あー、もう決められないから、5種類くらい一気に頼んじゃお!! え、意外と大食い? もう、デリカシーないんだからあ」
//SE 静かな店内に、春華と彼と焼き鳥を焼く店員の明るい声がゆっくり響いた
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