仮説
夏美たちは再び、玲奈の家に行くことにした。
今度は線香をあげるだけではなく、玲奈の話を、あの時の話をするために。
当日は日曜日だったためか玲奈の母親のほかに玲奈の弟と父親も家にいた。
前と同じように線香をあげた後、タイミングを見計らって夏美は言った。
「今日は玲奈さんが亡くなったときのこと、ちょうどお話しようかと思っていて」
母親含め、家族は静かに頷いている。
「私、あの日からずっと引っかかっていたんです。警察からは自殺の可能性が高いって言われていたけど、玲奈は本当に死にたかったのかなって……」
「そうだね」と暫くして父親が言った。
「僕たちもずっと同じことを考えているよ」
弟は俯きながら夏美たちのやりとりを聞いている。
「暫くは、思うところがあって、そういう結果になってしまったんだと納得しようとしました。……でも、最近になって、やっぱり自分から死を選んだんじゃないって、そう思うようになりました」
「……どうして?」
母親が聞き返した。
「ここからは、僕からも少し話させてください」
今田が夏美の横に移動して言った。
「これはあくまでも仮説なのですが――」
今田は夏美の方に目を向けた。それを合図に夏美は頷いて、持っていたスマホを今田の近くにそっと置いた。
今田は先日読んだ新聞記事について話した。
新聞記事の女性はあることで数か月悩んでいた。
朝起きると、部屋の物が移動している、手や足にけがをしている、クローゼットの中にいる、などだ。
女性は思ったらしい。自分は誰かから狙われているのではないかと。
しかし、自宅や部屋の鍵が壊された形跡はなく、窓ガラスも割られていない。
その上、何かが盗まれたわけでもない。
女性から相談を受けていた友人は、追い込まれている
そこに映っていたのは、驚くべきものだった。
「子供のころに太っていた時期があったって、先日お邪魔したときに言ってましたよね?」
「え……?あぁ、そうね。確かそんな話を少ししたような……」
今田が尋ねると、母親は思い出しながら答えた。
「もしかして、それは夢遊病でしたか?」
今田の言葉に父親と母親は顔を見合わせてハッとした表情を見せた。
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