モルヴァレスの森

雪に閉ざされた辺境の地、モルヴァレス。
吹雪の夜、ひとりの青年ヒロが、森を治める子爵——ゴラートに救われた。
彼の屋敷に住まう事となったヒロは、この世界における居場所を得つつあった。
そんな奇妙な共同生活のうち、ヒロは少しずつこの世界の輪郭を知っていく。

やがて訪れた冬祭の夜。
篝火の下で少女が祈りを捧げた瞬間、白い光が世界を包む。
ヒロを呼ぶ声——それは、長い封印の底で息づく、灰の魔女、ナヴィアの魂。

その呼び声に抗いようもなく誘われるヒロは、自身の存在の異質性に触れる。

彼女との邂逅から間も無く届いた戦いの報せ。
理性と祈りが混ざり合う戦場で、秩序は崩れ、沈黙が広がっていく。
幾千の死が積もるとき、かつての使徒は再び息を吹き返す。

血と雪の果て——ヒロは、祈りを知った。

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