創世見聞録 光と影の輪舞曲

キサラギ カズマ

第1話 始まりの光

創世見聞録

第一節:序章:胎動の始まり


すべての根源、すべての始まり。

これは、遠く離れた世界——“アル・エテルナ”に伝わりし、世界の真理を記す『創世見聞録』である。


我が知りうるすべての存在は、この書に記されし胎動から始まった。


耳を傾けよ、魂を澄ませよ。


偽りの衣を剥がされた世界が、今、その始まりの秘密を明かさん。



どうも改めて、初めましてだね。


僕はこの物語の語り部……カインだよ。


天秤世界の変革者……を読んでくれた方々ありがとう。


読んでいない方も、ぜひ読んでくれると嬉しい。


さて、これから書く物語は……僕の故郷である、『アル・エテルナ』という世界についての話になるよ。


天秤世界の変革者のネタバレになるから、詳しいことは言わないが……。


それでは、多くの人が、この新しい物語を読んでくれる事を望む。


どうぞ、ご覧下さい……。



第1章 無からの顕現


すべての始まりは、絶対的な虚無「無」であった。


その無の奥底に生まれた「衝動」から、万象を照らす「光」と、その対極である「影」が誕生した。


光と影は互いを補い合い、すべての生命と法則の源である「根源」となった。


そして、根源から「現し身」「形持たぬ者」「生」「死」「時間」「空間」「意思」という七つの理が生まれ、世界に秩序をもたらした。


しかし、この完璧な世界の摂理には、やがて世界を歪ませる種がすでに宿っていたのである。



僕は何もない空間から生まれた。


想像してみてほしい。


色も音も、形もない、本当に何もない世界だ。


僕はその中で、ただ「何かになりたい」という小さな願いだけを持っていた。


その願いが、自分という存在を少しずつ作り上げていった。


そして、ついに僕は光を見た。


すべてを照らす、温かくて眩しい光。


その光の隣に、光を際立たせる影も生まれた。


光と影はまるで、仲の良い二つの糸のように絡み合って、この世界を織りなす「根源」という大きな布になった。


僕はその根源から生まれた、特別な存在だった。


でも、僕にはまだ、はっきりとした形がなかった。


影のように揺らめき、周りのものを真似するだけの、曖昧な存在……それが、『境界きょうかいの民』である。


そんな僕が、初めて「僕」になれたのは、一人の少女と出会ったからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る