第三章 2

蓮花を初めて抱いた日のことを、槇は時々思い出す。

 テーブルに座っていた彼女の両足を持ち上げてベッドに運び、共に抱き合った時のことを。

 舌を絡め合い、唾を舐め合い、深くなっていくくちづけ、次第に激しく、苦しくなっていく呼吸、槇が蓮花の服を脱がせて胸を揉みしだいていると、彼女は怯えたように言った。

「先生……私、初めて、で」

 それで、槇は動きを止めた。

「未成年、じゃないよな」

「ちが、う」

 それで槇は安心して、もう一度深く深く蓮花と唇を重ねる。下半身に手が行く。下着を脱がせる。ああ、もう濡れている。

 指で慣らして慣らして、もういいだろうというところで身体を挿入れると、蓮花は身体をびくりとさせた。

「い、たい」

「まだだったか。ごめんな」

 何度も何度も、丁寧にほぐす。

「ん、いた、い」

 しかし、結果は同じ。次第に槇が、焦れていく。蓮花も焦る。どうしよう。このままじゃ、終わらない。先生を満足させてあげたい。終わらせてあげたい。

「蓮花」

 槇は蓮花の足の間に顔を埋≪うず≫めると、舌をすべらせた。頭の上で、蓮花がびくりとなるのがわかった。そのまま、彼女の一番敏感なところを探し当てて舌で転がした。蓮花が奥から、滴っていく。

 もう一度試みてみた。身体を密着させると、腰を動かす。ん、と蓮花が唇を噛む。

「痛いか」

 蓮花は奥歯を噛んだ。痛い。まだ痛い。でも、これ以上先生を焦らしたくない。もうこれ以上、待たせたくない。

「へい、き」

「ほんとか」

「うん」

 槇は身体を律動させる。蓮花が小さく悲鳴を上げた。歯を食いしばって、蓮花はそれを押し殺す。

 槇が蓮花の胸に顔を押しつける。

「蓮花、蓮花」

 槇が夢中になって身体を動かしている。蓮花は痛みに耐えながら、目をぎゅっと瞑る。

 その日槇が見た夢は、いつもと少し違っていた。

 相変わらず彼は、真っ黒な泥のなかを歩いている。

 顔まで沈んで、もう鼻先までいくらもないという時になって、頭上から光が差し込んでくるのだ。

 それはまぶしいが、目も開けていられないというほどのものではなく、とても温かでやわらかいそれなのである。

 その光に思わず手を差し伸べたところで、目が覚めるのだ。

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