百葉箱文庫

山崎 葉

百葉箱になりたい

 百葉箱。懐かしい響きである。

 小学校の校庭にポツンと置かれた白い箱。いや中庭だったかもしれない。

 それぐらい曖昧な存在だったけれど、気温を観測する物であることは理科の授業で習ったから当時から知っていたはずだ。


 今回新しいエッセイを始めるにあたり、良いタイトルがないかと「葉」と名の付く言葉を探していたときに再開した「百葉箱」という言葉。


 色々調べてみようとWikipediaを見ていると、どうやら1954年から小学校で百葉箱を設置し気温の観測を始めているらしい。

 直接の日射、雨や雪の影響で観測に影響が出ないよう、正しい観測ができるように温度計を守り続けていたのが百葉箱の役割だと知ってホロリときそうである。

 いやおそらく授業ではその内容も込みで教わっているはずで、ごっそりその部分を聞き逃している幼き日の葉少年のぼんやり具合にもホロリときてしまう。



 外的要因により正確な判断が出来なくなるのは人間も一緒だと思う。

 心とか気持ちは自分が思っている以上に脆いもので、簡単に外からの影響を受けてしまう。昨晩の決意なんて、次の日の朝に簡単に折られてしまうことがある。


 雪みたいに冷たい言葉を浴びることもあれば、雨に打たれたみたいに泣かされることもある。ときには日射みたいに誰かの充実した表情の輝きが眩しくて目を逸らしてしまう。


「気合」とか「根性」とかが苦手で、脆い心を奮い立たせるほど自分の心に厳しくなれないヘタレな自分は『よー頑張った。上出来や』と自分で自分を励すことしか出来ない。そんなことだからいつまで経っても成長しないんだよ、と世間の流れに言われているような毎日を過ごしている。

 

 ただ自分の心を守るためには、自分が自分自身の百葉箱になるしかない気がしている。


 今日も明日も観測するのは本当の自分の気持ち。

 新しいエッセイよろしくお願いします。

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