穏やかな熱味。
taiyou-ikiru
第1話
今、なにものかに追われている。辺りの黒に淀んだ紺色はそれを補強するかのように立ちずさんで居る。月は沈む様に昇り、太陽は微塵も見当たらない。ふと、月を見上げると月の色はなくなっていた。おぞましほどの温い濁音が辺りに散布されている。
やけに夜中は五月蠅い。走ると腐葉土に携わる木の葉や木の枝が秀逸な破壊音を駆けるように轟かせる。
その中で、今何かに追われている。その存在は視認できない。後ろを向いても上を向いても辺りは混色の紺色だけ。真暗に近しい。心の緋色の何言わぬ叱咤感が焦燥に燃え上がり火を着ける。と燃えがると同時に辺りは狼の鳴き声が響き渡った。それにびくっと警戒を深く催しながら鈍痛な速さで対岸の方に駆け目指す。
何れ業火に灼けるような焦燥感を感じた。実際色ない燻りが明らかに燃やし続けていた。その光景にやはり僕も移されるものである。
その焦燥感から辿ると心の奥部は深く湿った銀色の刃に傷つけられた粘膜が多様に在った。決して諦めない100の心があるのであった。
黒いカラスは優にしっとりと鳴き、辺りのぬるい風は熱味を帯びて体中に吹いてくる。狼の遠吠えはそれに乗っけてやってくる。辺りの黒に淀んだ混色はそれを確信に変えた。
今、なにものかに追われている。
やがて道筋の真ん中に光を見つけたと思うと閃光に肥大し視界を覆いつくした。すると途端に落下活動を始めた。白い亜空間の中駆け巡る速さは些か速度が落ちていた。
そうだな。ゆっくり休め。
穏やかな熱味。 taiyou-ikiru @nihonnzinnnodareka
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