かき氷

@19910905

第1話



かき氷


氷の欠片が、白い背をすべり落ちた。

ひやりとした感触に、彼女は小さく息を吸う。


夏の午後の光は薄く、

部屋の奥で蝉の声だけが遠く響いている。


赤い雫が一筋、

細い背骨をたどり、

やがて布の縁へと消えていった。


「冷たいね」

そう囁いた声が、

なぜか胸の奥で熱を帯びる。


氷の甘さと、夏の短さが、

背中に残る跡のように

静かに、確かに

心を染めていった。




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かき氷 @19910905

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