鬼の首をとる

@19910905

第1話



森の奥、僕は鬼と対峙していた。


一閃。刀が光り、鬼の首は体から離れた。


「おおお……首だけにされても生きておるか……」


首が喋った。僕は後ずさる。


「酒を呑もうじゃないか、武者殿」


焚き火の前、僕は刀を置き杯を差し出した。首は器用に受ける。


酒が回ると鬼は昔話を始めた。


「都ではな、金の冠を盗んだ盗賊団を一晩で蹴散らしたのじゃ」


「本当か?首だけのくせに威張るな」


鬼は得意げに首を傾げた。


「信じろ、武者殿。その夜、鶴も鳴き止んだという」


僕は吹き出す。


やがて鬼は僕の刀を手に取り、ふざけ始めた。


「これで俺の首も斬ってみろ!」


「やめろ、冗談だろ!」


刀と首だけの鬼の奇妙な戦い。

笑いと恐怖が交錯する、一夜の宴だった。


夜が明け、鬼はそっと森へ消えた。


僕は刀を鞘に戻す。


残ったのは、昨夜の酒と笑いと、首の得意げな笑みだけだった。










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