EP.2

「早く終わらせよ」

 私は虚弱体質だし、食も細い。なので、活発な運動も苦手だ。左の眼帯、マント、格好だけ一丁前。「どうだ、凄いだろ私」どうも自慢げな自覚はある。

 ニャーんの猫パンチが顔面に炸裂。

「私? わしとか統一しなよ、それに方言も――」

 そっと、口に手を被せた。人差し指を振り、少し睨む。猫のくせに細かい奴。「ほっとけよ!」って思う反面私はかなり不安定な半端もんだからな。

「気分屋。いや、このモードを維持するのにも情緒不安定になるんだよ」

 何だか欠伸してつまらなさそうな顔。「こんなんでも相棒の三毛猫なんだよね」でもって、村人も『ワー、ワー』騒いでるしそろそろ終わらせるか。

「忌まわしき廻天よ、巡れ! 正せ! 時よ! 過去となり異世界よ――」

 呪文をブツブツ言いながらも大地の揺れは続いて。私の頭もクラクラしてる。(あぁ、早く帰りたい)その気持ちを隠し、「本業に没頭する私って、もしかして凄い?」

 また猫が突撃。頭をガブリ、痛いわ。急かす牙をチラつかせる。ため息、仕方なく目で合図。「わかってるわ」って手でも合図。

「消え去れ! タイム・リダクション!」

 対象に向け、両手を前に出す。手が攣りそうな手を必死で「我慢や」。だめだ、手がプルプルしてる。「あ、手が温かい」そろそろ来る。灰色の光が放出されて、空、地面、村人たちを覆い尽くした。

 そして今、開始される。パラパラと粒子になる空、雲が滝のように滴り地へ。村人たちは『格ゲーのポリゴン』みたい。どんどん消滅していく。一方私は、そう無反応。

「え? 慣れてる」

 私にしか聞こえない猫の声。というか、もう聞ける人がいない。だって、もう周りから人が消えていた。

「はぁ、これがデビュー戦か……」

 こんな景色に慣れるなんて、ありえない。でも何も感じない身体。誰の目にも虚しい作業する背中は小さく映ることだろう。

 

 ▽▲▽▲ NOW Struggle……


「力の行使が終わったみてぇだ。初めてだったけど、ぶっつけ本番でうまくいったみてぇだな」

御堂 流星みどう ながれ。初めての異世界デビュー戦はどうだった?」

 コイツ、何なんだべさ。感想求めんなよ、それに相棒とはいえ、馴れ馴れしくすんなや。とはいえ、流されてはダメだ。深呼吸、深呼吸。

「どうだった、私のアイドル活動。凄いべや?」

 そこまで息巻くその声に、周りの空気がスッと引き締まった。世界が終わる匂い、いや無臭混じりの冷たい風が頬を撫で、流星は鼻先で小さく笑った。

「作者が夢見た異世界、全部潰さなきゃならねぇ」

 目の奥に少し、ほんの一瞬だけ。迷いが覗いたのを、誰も見逃さねぇ。だが、言葉には出さねぇ。やることやるだけだべさ、とでも言いたげに、マントの端を指先をギュッと握りしめた。力拳が痛ぇが握らんとな。

「そうさ、異世界なんて幻想だべさ! ワシが全部潰すべや」

 力の限り。

「こんな異世界あってはならないよ」

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