第5話

オーガニックレストランカフェの外開放エリアテラスに移動し、座ると、未来都市の東京の空気は少し冷たく、遠くに浮かぶテニスコートが目に入った。五段に積み重なった空中コートが、縦横に五つずつ、合計二十五面。透明な支柱もなく、まるで光と空気に支えられているかのように宙に浮かんでいた。エアカーの流れる道や光るビル群を背景に、その光景は不思議な静謐さを湛えている。


弥深が視線をコートに向けて言った。

「たまにはテニスとかやりたいなあ。あのラケットにボールが当たる瞬間の音とか、結構好きなんだよね」


小氷は、「話題、変えてもいいかな?百合の話だけど……」


「いいよ、別に、テニスと百合?かな?」


小氷はテラスの手すりにもたれながら、話した。

「百合の漫画、小説を見ると違和感があって……フェティシズム的な描写を否定しないけど、それしかないのは…相手に対する脆弱感情って……としてしか……」


小氷は言葉を続けた。「社会抑圧圧力に対する抵抗として、百合の性描写は一種の象徴になっているけど……」


二人は、浮かぶテニスコートを眺めながら静かに頷き合った。

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