露袖~とある禿の少女の物語~

毛 盛劉

序章 露に濡れる ~プロローグ~

あらすじ


貧しい農家に生まれた少女・陽奈(ひな)は、幼くして天川遊郭へと売られ、禿として「三武屋」に迎え入れられる。

そこには、優しく包み込むような母花魁・義屋姫、そして祖母のように見守る乃花姫、さらにその母である華麗姫ら、幾世代に渡り芸と情を受け継ぐ女たちがいた。


やがて陽奈は、花魁「愛娠姫(あみりひめ)」として人々を魅了し、遊郭の頂点に立つ存在へと成長する。

しかし彼女の手記に綴られるのは、華やかな宴の裏に潜む孤独と葛藤、そして「母」として娘・加那、孫娘・萌愛へと命と芸を繋いでいく強い願いだった。


時を超え、陽奈の遠い子孫である美奈と穂奈は、一冊の古びた手記に出会う。

それは「誰に読まれなくてもよい」と綴られながらも、数百年を超えて彼女の声を未来へと運んできた証。

日記の中の呼びかけに耳を澄ましながら、二人は陽奈の人生から「芸を受け継ぐこと」「母であること」の意味を見出していく。


袖にこぼれた涙が乾くことなく、時代を超えて受け継がれる。

これは、一人の禿少女が生きた証を記し、未来へと繋いだ「露袖」の物語である。

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