第2話 通小町

高校に入学して間もないある日。


「初めまして、良かったら俺と付き合ってほしい」


3年の先輩、翔君に告白された。


顔イケメン。

女子人気ありあり、憧れの先輩って感じ。


私の率直な感想は“チャラい”

私は少しイジワルして


「今日から毎日登校日に、好きって連続100日言ってくれたら考えますよ」

返す刀で

「よっしゃ、がんばるよ!」

だって。


どぉせ長く続くわけないじゃん。

そもそも私には晴人ってゆう中3以来、多分…両思いの男の子がいるんですよーだ。


それでもとりあえず、毎日1回「好き」って伝えられる日々が始まった。


最初の10日は周りの先輩や友達に茶化されて、冷やかされて、最悪に恥ずかしかった。


30日が過ぎた頃。翔君の「好き」は日課になりつつあって、もう「はいはい」って感じだった。


50日が過ぎた頃かな。

翔君は相変わらず愛を伝えに来てくれるんだけど、私は少しまいってた。


多分、翔君のことが好きな先輩かな?靴隠されたり、鞄捨てられたり。

もう最悪。


挙げ句の果てには、放課後3年の教室に呼び出されて。

「あんたさ、調子のりすぎじゃない?」

だって。怖くて何も言えないよ。


そしたら翔君が血相かえて教室入ってきて。

「俺が万智を選んだんだ。文句があるなら俺に言え」だって。


あんなに怖かった先輩も「ごめん」とか言って、青菜に塩って感じだし。

流石にキュンでした。


その後も60日、70日ってずっと来てくれた。風邪引いてるのにわざわざ「好き」って言って、すぐに早退していった時もあった。


80日が過ぎる頃には晴人と翔君でぐらんぐらんに揺れてたな、正直。


99日目


「今日も好き、また明日な」


もう「好き」って言いに来てくれるのを、心から待ってる私がいた。



99日目


「今日も好き、また明日な」


いよいよ明日は100日目だな。

って帰り道、我ながら良く頑張ったと思う。


初めて万智を見た瞬間『あ、この子だな』

って思った。茶色がかった細い髪も、真っ白な肌も、猫みたいなイタズラっぽい表情も、全部ど真ん中。


思い切って声をかけた時。

「初めまして、良かったら俺と付き合ってほしい」

って、ありえないだろ。

正直やっちまったと思ったよ、流石に。


でも、帰ってきた返事は

「今日から毎日登校日に、好きって連続100日言ってくれたら考えますよ」

だって。


まだチャンスあるじゃんっ!!

絶対頑張れるって、0秒で思えた。

途中、万智を悲しませるような事もあったけど、何とか乗り切ってここまで来た。

明日はいよいよ…。


て…左の脇道からボールを追いかけて走ってる、ちいさな女の子。

女の子の左側は本道ギリギリまで高い塀。

正面から向かってくるトラック…。


こおゆう時とっさに体が動く人間で良かったって思うよ。

うん、本当に…


——あーぁ。あと1日だったのにな。



100日目




「好きなんだ、俺と付き合ってほしい」




——告白しに来たのは…晴人だった。




「ごめんね晴人…。私、大好きな人ができたんだ」

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ショートショート集 たっち @UTDTTY

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