12月 確変
「やらしすぎ!!」
まきしょーの話を聞いた俺はつい声が大きめになってしまった。
「いやあ……」
「いや、まきしょーじゃない。照れるな。相手の子だよ。めちゃくちゃ小悪魔ちゃんじゃない!?」
少し前に話は遡る。
いつものファミレスに行った時、今日は先にまきしょーが席に着いていた。
シャンシャンと鈴の音が鳴る音楽が流れてる街中、赤と緑とライトアップが眩しい。
体も寒さに耐えるモードに切り替わった時期になった。
「お待たせ、もうなんか頼んだ?」
「ピザにしようかと思ってました。一緒に食べませんか?」
メニュータブレットを見ると、骨付きチキンやピザ、ポテトと唐揚げのセットと「MerryXmas」の文字と共におすすめ欄に載っていた。
「ピザいいねー!食べる食べる」
季節感を除いたら、二次会のカラオケで食べるようなメニューが主役になっている。
「俺骨付きチキンにしようかな。気分味わうわ」
「大きさどれくらいだろう。そんなに大きくないなら僕も食べます」
結局ピザ1枚と骨付きチキン2個、フライドポテトを1皿頼んだ。
「航輝さん、これ……」
まきしょーから紙袋を渡された。
「えっ!プレゼント?」
「この間、お菓子作りしてみるって言ってたじゃないですか。作ってみました」
紙袋の中を見ると、ジップロックの中にラップされたマドレーヌが入っていた。
「手作り?すげー!」
「マドレーヌ食べれますか?」
「食べれるよ、ありがとう!」
まさかまきしょーの手作りマドレーヌが貰えるとは思わなかった。
「よかった。早めに食べてください」
「すごい。大変だったんじゃない?作るの」
「大変でした。まずオーブン家になくて」
「詰んでるじゃん」
頼んだ料理が来た。
ひとまず食べながら話す。
チキンにかぶりつくと、肉汁が口の中で広がり、いつも通り火傷をした。
「オーブンないのにどうやって作ったの?」
「例の彼女のお宅にあったので、使わせてもらいました」
「家行ったの?進展してるじゃん」
まきしょーはカットしたピザを折りたたんで食べていた。
「家入れたってことは相当まきしょーのこと気に入ってるんじゃない?もう付き合えそう」
会う度キスするルールがある男を家に入れるなんて、さすがに好きじゃないと説明つかなくなってきた気がする。
「そうなったら嬉しいですけどね。相手の過去の恋愛話聞かせてもらったんですけど、中々嫌な思いしてるみたいでした」
「へぇ。まぁ人生色々あるよね」
「端的に言うとヤリ捨てされたみたいな」
よく聞くよなぁと思いつつも、今まきしょーが置かれてる立場もちょっと近いよな。
「僕は相手に怒りと嫉妬を覚えました。で、ここから胸キュンドキドキポイントあったんで聞いてもらっていいですか」
「胸キュンドキドキポイント!?お願いします」
「そのオーブンで、過去にそのヤリ捨て男へ料理作って振舞ったそうで」
「手料理も食べててヤリ捨てしたんだ、やばい男だな」
「嫌な思い出があったけど、牧口君とマドレーヌ作った事で思い出の上書き出来たからありがとう、と言われ」
「くぅー!これはMDP」
「その後相手からお礼のキスされました」
「ちょっとまて?向こうから?あっまってこのマドレーヌも二人で作ったの!?」
「そうです」
「やらしすぎ!!」
話しを現在に戻す。
食べ終わった皿を片付けてもらい、ドリンクバーへ。
俺はホットのほうじ茶を、まきしょーはリアルゴールドを選んで席に着く。
「彼女ちゃんそんなことしたらそりゃ軽い女だと思われちゃうよ」
「僕は彼女に好きと伝えてますし、ただただ嬉しかったですね」
火傷した口内にお茶が染みる。
「彼女の気持ちは変わったっぽい?」
「僕も知りたくて、ちゃんと聞きました。どう思ってますか?って」
「偉い。なあなあにするよりいいぞ」
「半信半疑と言われました」
ズズズとリアルゴールドを飲むまきしょー。
まぁ、半分かぁ。
「あれ、そういえばそのやばい男は置いといて、今好きな男の方とは進展無いの?」
「…その時言ってた言葉は、…」
まきしょーがもにょもにょしている。
いつも言葉をすぐ言うのに珍しい。だんだん顔も赤くなってきた。えっ?まさか?
「…その人一筋じゃなくなってきたかも、みたいなことを…」
「はい!今日のMDPここです!なぁんだそれ!まきしょーに向けて言ったってことだよなぁ?」
「2人きりだったので多分…」
「俺ダウンしかけてる。小悪魔ちゃんすぎる。そんなん言われたら眠れなくなる」
「眠れませんでした」
「だよな!もう絶対まきしょーに気持ち傾いてるよ、押せ押せでよかったかもな」
興奮してきた為、クールダウンのカルピスを持ってきて飲む。
めちゃくちゃ嬉しい。
このまま真っ直ぐにまきしょーの恋が咲けばいいな。
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