11月 継続

夜がどんどん寒くなって来た。

紅葉も終わって乾いた風が耳を赤くする。

好きだった秋は好きなアニメの濃厚な1話のように一瞬で過ぎ去っていった。

いつものファミレスに入ると、「あったかフェア」というなんとも曖昧なフェアをやっていた。

まきしょーはまだ来てない。

席に着き、タブレットのメニューを見るとビーフシチューやグラタン、一人前の鍋にすき焼きと卵が付いたメニューなどがあった。


「お待たせしました、何か頼みましたか?」

まきしょーが来た。マフラーがぐるぐる巻きになっている。

「今日はビーフシチューにしようかな、めちゃくちゃ寒いし」

「ビーフシチューいいですね。僕も温かいものにします」



しばらくして、ビーフシチューとクリームグラタンが運ばれてきた。

「グラタン、この間頼んでなかった?」

「頼みましたけど、食べれなくて航輝さんに食べてもらったんですよ」

「あーそうだった!かぼちゃのやつね」

ビーフシチューはポットパイのタイプで、スプーンでパイをシチューの中へ落とす。

「それで、何か進展あった?あってくれ!」

穴が開き、匂いと熱気が立ち込める。

ザクザクとスプーンで差し込むこの動作が好きだ。

「……たまには、航輝さんの話からとかどうですか?」

「俺?俺は……仕事しかしてないな……」

シチューの中へ入ったパイを浸して食べた。熱い。

「仕事行って、ご飯食べて、家帰ってる」

「趣味とか、何か始めたとか」

「えー?うーん…ないかなぁ」

「家で何してるんですか?普段」

「スマホとパソコンいじってる」

「うわあ」

「待って!あー……テレビとかYouTubeとかドラマとかアニメとか見てる!」


沈黙が流れた。

まきしょーはグラタンを食べている。

グラタンも熱いようで、1口1口冷ましてからはふはふと食べていた。


「そういうまきしょーはどうなの?趣味あんの?」

「実は、良かったら一緒に始めようと思ってるものがあります」

まきしょーから久しぶりに恋愛以外の提案がきた。

「おっ何!?」

「料理です」

「りょうりぃ〜!?料理って趣味か?」

「例えば、お菓子作りって言えば趣味じゃないですか」

「あー確かに!」

「お菓子じゃなくても、1個くらい得意料理があるってかっこいいかなって」

「かっこいい。俺ナポリタン作りたいかも」

「ナポリタンいいですね」

「まきしょーは何がいい?」

「か……カルパッチョとか」

「難しくない?魚切るの」

「カレーとかシチューとか…」

「そもそも包丁使える?」

「家に無いですね。キッチンバサミはあるのでどうしても何か切る時はそれを使ってます」

「なるほどなぁ。」


熱々のシチューは食べ終わったが、喉が火傷したような気がする。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る