本当の繋がり

えいじ

出会い

私の名前は小林優奈。高校二年生。SNSをやっている。


ある日の電車でのこと。


酔っぱらった中年の男性が座席に横になって寝ていた。その様子を、私は「面白そう」と思い、スマホで写真に収めようとした。


「止めときなよ」


突然、見知らぬ会社員風の男性に声をかけられた。


「え?」と私は振り返る。


「撮ってどうする?友達に見せるのか?SNSにでも投稿するのか?面白半分でやりたくなる気持ちは分かるが、そんなことをしたら君の印象も悪くなるんだぞ」


(なに、この人…うざい)


私は心の中でそう思った。


電車は次の駅に着き、ドアが開く。私は少し彼を睨みつけ、早足で降りた。


「…」


会社員は真顔で、しかし少し呆れたように私を見送った。




翌日、学校の教室にて。


「ねぇ、聞いてよ。今日さ、電車で酔っぱらった親父が横になって寝てたの。これはバズると思って写真撮ろうとしたら、知らない親父に止められちゃったの。マジムカつく」


亜子は笑いながら言った。

「あー、いるよね。そういう、やたら正義感振り回してくるうざいオッサン」


恵も頷く。

「ほんとね。私もこの間、友達と電車で話してたら、静かにしなさいって言ってくる人がいてさ」


「いるよね。そういうオッサン。ほんとうざい。普通に面白いと思うのに、なんであんなに怒ったのか意味不明じゃない?」


「ほんと、正義感振りかざしてるだけでしょ。写真撮るくらい何でもないのにね」


恵がスマホを見せながら言った。

「ねぇ、それよりこれ見て」


他のクラスの女子が、他校の生徒と手を繋いでいる写真を誰かが撮ったものだった。


「あ、うそー。あの子、彼氏いたんだ」亜子が驚く。


私は思わず、「…あ、そうなんだ」と口にした。友達だったため、少し気まずくなる。


そのとき、私はふと気づいた。私は無理に友達に合わせていることが多い、本当の自分の感情を隠して、笑ったり共感してみせたりしていたのだと。




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