第13話 青龍刀

 釜川のほとりで、竜二は裏切り者・黒豹と対峙していた。黒豹は、両組織を潰し合わせ、宇都宮の裏社会を完全に掌握しようと企んでいたのだ。そこへ、玄武組の鬼道とシンが駆けつけ、竜二と共闘する姿勢を見せる。

​「俺たちの縄張りで勝手な真似はさせねえ」

​ 鬼道は低い声で言い放つ。黒豹は嘲笑し、懐から冷たい輝きを放つ刃物を取り出した。それは、中国の伝説的な武具、青龍刀だった。黒豹はまるで舞うかのように刀を構え、その切っ先が月明かりを反射して不気味に光る。

​「裏社会の闇は、お前たちのような甘い奴らには理解できねぇんだよ」

 ​黒豹が叫ぶと同時に、青龍刀が唸りを上げた。その一撃は重く、風を切り裂くような音を立てて竜二に迫る。竜二は間一髪で身をかわすが、服の袖が鋭く切り裂かれた。一方、鬼道は懐から取り出した二丁拳銃で応戦するが、黒豹は青龍刀を盾のように使い、弾丸を弾き飛ばしていく。

​ 青龍刀の凄まじい攻撃に、竜二と鬼道は連携して対応する。竜二が肉弾戦で黒豹の動きを封じ、鬼道が銃撃で牽制する。シンは、その隙に周囲の防犯カメラの電源を落とし、戦いの痕跡を消していく。

​「お前の動きは、まるで古びた書物の中のようだ」

​ 鬼道が挑発すると、黒豹の表情が一瞬歪んだ。その隙を見逃さず、竜二は黒豹に渾身の右ストレートを叩き込む。黒豹は大きくよろめき、その隙に鬼道は拳銃を捨て、青龍刀の柄に狙いを定めて飛び蹴りを放った。

​ 金属と骨がぶつかり合う鈍い音が響き、青龍刀は黒豹の手から離れ、宙を舞った。その刀が水面に落ちる前に、竜二が間髪入れずに拾い上げる。しかし、竜二は刀を黒豹に向けるのではなく、刃を自らの手首に走らせる。

​「娘を…娘を返せ…」

​ 竜二の血が、青龍刀の刃を伝って滴り落ちる。黒豹は、その行動に一瞬戸惑った。その隙に、シンが黒豹の背後から特殊なスタンガンを当て、黒豹は全身を痙攣させて崩れ落ちる。

​「これで…終わりにしましょう」

​ シンは、倒れた黒豹に静かに告げた。黒豹はユリの監禁場所を自白し、彼女は無事に保護された。黒豹は、警察に引き渡されることになった。

​ 釜川は、夜明けとともに静けさを取り戻していく。竜二は、青龍刀を川底に沈め、過去の因縁に決別した。鬼道とシンは、その場を静かに見守っていた。彼らの心には、釜川の穏やかな流れとともに、血と鉄の匂いが混じり合った、忘れられない夜の記憶が刻まれていた。

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