第39話 アリスと炎鳥会

 アリス達三人は、地図を見ながら街を歩いていた。

 入った関所は大通りから少し外れているためか、大通りに出るようになっていった。

 大通りに行くには、関所を出た後にまっすぐ行き、肉まん屋のある角を左に曲がるようになっていた。

 その地図に従うように歩いた。関所周辺だからか大通りを離れたと言えども賑わっていた。

 少し歩くと、肉を蒸した香ばしい香りが漂っている。その匂いに近づくかのように進んでいった。

 進めば進むほど匂いは強くなり、腹を鳴らそうとする。

 もう少し歩くと匂いの元である、肉まん屋に到着した。肉まん屋と言いつつも、色々な中華まんを売っていた。牛まん、あんまん、豚まん、ピザまん等など。

 この匂いを嗅いでおいて買わないことができるだろうか?いや、できるはずもない。

 アリス達は、中華まんを一人一個買って目的地へと進む。

 アリスはあんまん、神威は牛まん、ルクスは豚まんを買った。

 大体一つ、ゴブリン三から四体討伐した金額と同等だ。

 肉まん屋から左に数分歩くと大通りに出た。

 大通りは、関所周辺とは比べ物にならないほどに賑わっていた。

 道いっぱいにいる人。通る人は、町人、商人、道化、戦士、聖職者、軍人、冒険者といろいろな人たちがいた。道の端には、物乞いや怪しげなものを売る商人、宗教勧誘。

 その少し離れた道にいるだけでも、人酔いしそうだった。

 けれどもこの地図ではここを行くようになっているので、ここを通るしかない。というのも、この地図は道順通りに行かないと本当に迷うだろうという描き方をされているからだ。

 人と人の間をかき分けるように進んでいく。

 まっすぐに行って、急に人のいないひらけた場所へと出た。

 人込みの中にいたから分からなかったのだが...そこは大きな屋敷であった。

 遠くからでも分かるような立派な屋敷。関所からも見えるぐらい。

 屋敷というよりも城と言った方がいいだろう。屋敷にしては立派で大きすぎる。

 門は大きく少しここよりも小さな街の門と言われても納得できる大きさで、城はその門の五倍の高さがあった。

 門も城も華楽の伝統である赤を基調とした建築であった。

 門には大きく「炎鳥組」と書かれた看板が下げられていた。


「流石に違うよね?」

「そんな話は聞いたことがなかったような気がするでござるしなぁ」

「一回戻りますか」


 そう言って三人は門に背を向け、歩き始めようとする。その時、背後から突如と声をかけられた。


「おい、そこのお前ら。ここで何をしている?」


 アリス達はその言葉に圧倒された。威圧的な気配があったからかもしれないが、それだけではない。

 人ではないかと思える存在感。人と精霊の狭間位の、そんなかんじだ。

 振り返ってその異様な存在の姿を見た。

 見た感じだとただの男の人に見える。歳は三十前後といったところだ。

 少し頬がこけていて、目に疲れを感じる以外は特に思うことはない。

 華楽らしい服を身にまとっていて、丸縁のサングラスをかけている。腰には赤い棒を下げている。

 その赤い棒からは何やら魔力を感じた。だが、異様な気配はその棒からではない。


「あれ?誰かと思ったら神威じゃないか?久しぶりだな」

「お久しぶりでござる、ソン 空天クウテン殿」

「ハハ、そんなかしこまらなくていいのによ」

「いえいえ、拙者にとっては恩人であり兄のような存在故」


 その会話をアリスとルクスは無言で、ただ眺め聞くことしかできなかった。会話に入るなど無粋であって、困難だ。


「それで、後ろの二人は仲間か?」

「そうでござる。アリスとルクスでござる」


 空天それを聞くと、嬉しさと驚きの色を見せる。


「お前が仲間ねぇ、よかったな。お前らもこいつをよろしく頼む」

「「はい!!」」


 アリスもルクスもはっきりと応えた。それに神威は少し顔を赤らめる。


「ところで、此処には何をしに来たんだ?仲間を見せに来たわけではないだろう?」

「そうでござった。アリス、説明を頼めるでござらんか?」

「私の親、師に当たる人の友人に会いに来たんです」


 空天は少し考えると身近な質問を問いかけて来た。


「その友人の名前は分るか?」

「聞いてないですね」

「だったら、師の名前は?」

「パワーレス・ルールドです」


 その答えを聞くと予想があっていたのかニヤリと口の端をゆがめる。


「そうか、そうか。貴方が...神威、本当にいい仲間を見つけたな。付いておいで、俺たちの会長であられる【幻想の世界】タオ 霊幻レイゲンの所まで案内しよう」


 そう言って、門を潜り抜けて炎鳥会の敷地の中へと足を踏み入れた。

 炎鳥会の庭は広く、屋敷の入り口まで石でできた一本の道が続いていた。その道の長さは普通の家一軒と半分くらいの長さだ。

 あたりを見回すと、地面には白い砂利がいっぱい敷かれていて、その砂利で波のようなものを表現していた。また遠くを見ると、右のほうには大きな池、左の方には鳥の石像があった。

 石で作られた一本の道の両端には、等間隔で灯篭が置かれている。

 そうこうあたりを見ているうちに屋敷の目の前まで来ていた。

 空天が扉に手をかけた。




 この屋敷に来ることは、アリス達にとって大きなものを与えることになるだろう。

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