第29話 魔王城突入! 裏切り者の正体

 ――

 魔王城への突入


 黒い霧に包まれた魔王城は、まるで世界そのものを拒絶するような威圧感を放っていた。俺たち――勇者佐藤健一、魔法少女ルナ、騎士ロイド、そして王女セリーナは、鍋と武器を手にして城門前に立っていた。


「お兄さん……ついに来ちゃったね」


 ルナちゃんが杖を握りしめ、いつもの笑顔を少しだけ引き締めている。


 ロイドさんは険しい目で城を見上げた。

「油断は禁物です。魔王軍の本拠地……ここからが本当の地獄でしょう」


 俺は鍋を抱え、胸の奥に決意を刻み込んだ。


「魔王だけじゃない。王国の裏切り者も、ここで終わらせる」


 セリーナ王女も静かに頷いた。

「勇者様……私も共に戦います。父を操った影を、この手で断ち切りたいのです」


 城門がゆっくりと開き、黒い甲冑に身を包んだ魔王軍の兵士たちが現れた。


「来たな、人間ども……魔王様の玉座まで、生きて辿り着けると思うなよ」


 鋭い殺気が辺りを満たすが、俺は一歩も引かなかった。


「かかってこいよ。俺のスープで全員まとめて料理してやる」


 ――

 四天王の登場


 魔王城の広間に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。巨大なシャンデリアの下に立っていたのは、四人の異形の存在――魔王軍四天王だ。


「勇者よ、よくぞここまで辿り着いたな」


 その中で最も大きな体の男が一歩前に出た。黒い大斧を肩に担ぎ、赤い目がぎらりと光る。


「我が名はバルザーク。ここで貴様らの命を頂く」


 横でルナちゃんが耳打ちする。

「お兄さん、あれ絶対ボス級だよ!」


「見りゃ分かる……でも負ける気はしない」


 俺は鍋を取り出し、スキル《料理》を発動。熱々のスープが完成し、仲間たちは一口飲むごとに力と魔力がみなぎっていく。


「行けえええええ!」


 ルナちゃんの炎の竜巻が広間を覆い、ロイドさんの剣が稲妻のように走る。バルザークは豪腕でそれを受け止めるが、その動きは明らかに鈍っていた。


「なに……この力……!」


「スープの力だ。覚えとけ!」


 俺たちは一気に攻め込み、ついにバルザークを膝つかせた。


 だが――


 ――

 裏切り者の正体


「やめろ」


 低い声が響き、広間の奥から一人の男が歩み出てきた。


「……あれは……!」


 セリーナ王女が目を見開いた。


 現れたのは、王国の宰相ガルド。国王の右腕であり、誰もが忠臣と信じて疑わなかった男だ。


「ガルド……お前が裏切り者だったのか」ロイドさんが剣を構える。


 ガルドは冷笑を浮かべた。

「王国も魔王軍も、私の計画には必要な駒にすぎん。真にこの大陸を支配するのは、この私だ」


「お前……魔王と手を組んでたのか!」


「手を組む? 違うな。魔王をも利用し、いずれは私がこの世界の頂点に立つのだ」


 その言葉に、セリーナ王女が怒りで震えた。

「ガルド! 父を裏切り、王国を裏切り……許しません!」


 ガルドは魔王軍の四天王に命じる。

「勇者どもを殺せ。魔王様に捧げる前にな」


 バルザークが立ち上がり、再び大斧を振りかざす。


「お兄さん! こいつら本気だよ!」


 ルナちゃんが叫ぶが、俺は鍋を掲げた。


「上等だ……スープで全部ひっくり返してやる!」


 ――

 スープ無双再び


 俺は特製のスープを作り、仲間たちに振る舞った。ルナちゃんの魔法は桁違いの威力を放ち、ロイドさんの剣が光の軌跡を描く。


「うおおおおおおおお!!」


 バルザークの巨体がついに崩れ落ち、他の四天王も次々と倒れていく。


 ガルドは目を見開いた。

「馬鹿な……スープごときで……!」


「ごときじゃない。これが俺たちの力だ!」


 俺はガルドを睨みつけ、宣言した。

「次はお前の番だ。王国を裏切った報い、ここで受けてもらう」


 ガルドの口元が不気味に歪む。

「面白い……ならば次は魔王様の前で決着をつけよう」


 そして闇の魔法陣に包まれ、ガルドは姿を消した。


 ――

 決戦前夜


 魔王城の奥、いよいよ魔王本人との戦いが近づいていた。だが同時に、裏切り者ガルドとの決着も避けられない。


 俺は鍋を握りしめ、仲間たちに言った。

「次が本当の最終決戦だ。魔王も、ガルドも、全部まとめて終わらせる」


 ルナちゃんが笑みを浮かべ、ロイドさんは剣を強く握り、セリーナ王女は静かに頷いた。


 魔王城の奥から、禍々しい魔力が渦巻いてくる。

 決戦の時は、すぐそこまで迫っていた――。

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